• 父の夢を見た。二度寝をして眠りが浅かったせいだろう。

    元気だった頃の姿で、普通に家に帰ってきてステテコ姿になって酒を飲みながら明るくいろいろと話していた。俺は、父が既に死んでいることを夢の中でも分かっていて、でも面と向かって父に、「え、もう死んでるよね?」と聞くこともできなくて、奇妙な気分で受け答えをしていた。

    父が俺のそばに来たときに、思い切って父の体に触れてみたら、手がふわりと通り抜けるようなこともなくて、ちゃんと触覚があって、父の体温も感じられた。その途端に堰を切ったようになって、「何でだよ」と言いながら泣いていた。父は何の感情も浮かべない表情で、話すのをやめて静かにずっと向こうを向いていた。そこで目が覚めた。目が覚めた後も少し泣いた。

    父が死ぬ前も死んだ後も、これまで一度も泣いたことはない。そういえば、出棺の前に親戚に向かって挨拶をしたときに少しこみ上げるものがあった。あれはああいう状況で原稿を読めば、自分の感情と関係なく誰でもそうなるものだと思う。結婚式の両親への手紙みたいなものだ。あれから1年半経って、初めて泣きたい気持ちが湧いてきて泣いた。これまで抑圧していたのかどうか、自分ではよく分からない。

  • ずっと仕事をしている感じなのに、TODOが一向に減らない不思議。時空の歪みを感じる。

  • トンガの噴火で起こった気圧変化で「天気痛」が出たかどうかというWNIのアンケート。2割くらいの人が「出た」と言っている。うーむ。

    あの衝撃波の気圧変化は 2 hPa くらいだったので、高度で言うと20mぶんくらい。ビルの6階まで上って下りたのと同じ程度なので、そんなので頭痛とか出るかなー、と個人的には眉唾だが、敏感な人は 1 hPa 未満の変化でも発症するという話もある。そういうものなのか。なかなか大変だ。

    天気痛予報を作るデータについて

  • 竹田恒泰がそんなtweetをしているが、間違いである。

    火山ガスとして放出されるCO2の量はよく推定されていて、地球上のすべての火山が1年間に出す量を合計しても、人類が1年間に化石燃料を燃やして出す量の1/50〜1/100にしかならないことが分かっている。

    ただし、1980年のセントへレンズ山や1991年のピナトゥボ山のような大きな噴火だと、噴火が起こっている最中の「放出レート」で比べれば、人類の放出レートと同程度になることはあった、と、上記サイトで引用されている Gerlach (2011) では計算している。しかしそれはあくまでもレート(単位時間当たりの放出量)を比較した話で、それほど多いCO2放出はせいぜい数時間しか続かない。だから放出量のトータルで比べれば、火山は人類の足元にも及ばない。竹田はそのへん分かっていないのか、分かってて嘘を書いているのか、よく知らんが、「大噴火があるんだから脱炭素など無意味だ」という話は明確に間違っている。

    火山噴火が気候に影響を与えるのはむしろ、二酸化硫黄 (SO2) の方が大きい。SO2 が成層圏に運ばれると硫酸ができ、これが太陽光を反射して寒冷化する。ピナトゥボの2年後の1993年に記録的冷夏となってみんなでタイ米を食べた「平成の米騒動」はこれが原因だと考えられている。

    なので、今回のトンガの噴火で食糧不足がまた来る、という不安を煽るtweetも散見されるわけだが、衛星からのリモートセンシングによって、今回放出されたSO2の量はおよそ0.4Tg(テラグラム)と推計されていて、これはピナトゥボ噴火のとき(約20Tg)の1/50である。そう考えると、今回は寒冷化するほどの影響はないと考えるのが妥当だろうという感じ。あと50回噴火すれば分からんが。

    煽ったり叩いたり、濃い味付けの言説をばらまいて儲ける職種の人が世の中にはたくさんいるので、ちゃんと自分で調べて判断しなければならないし、調べて判断する方法を身に付けるために、人は勉強しなければならない。

  • Hunga Tonga–Hunga Haʻapaiってずいぶん長い名前だな、と思ったら、もともとHunga Tonga島とHunga Haʻapai島があったのが、2009年の噴火で一つの島につながったらしい。カルデラの外輪山の一番高い場所が海の上に出ている島なので、噴火によってくっついたり離れたり海中に沈んだり、わりと変化は激しい場所のようだ。

    津波だけでなく火山灰や火砕流も相当届いているのではないかと思われ、国家としてのトンガが無事なのか大変気になるが、科学の視点ですごいなと思ったのは、一つは気象衛星ひまわりで衝撃波がとらえられたこと。

    昔のひまわりは撮影が3時間ごとで、台風が来ているときだけ1時間おきとか、そういうものだった。イメージングの性能が上がったのももちろんだが、時間分解能が飛躍的に上がったことでこういう突発現象が写るようになったのは素晴らしい。

    もうひとつ感動したのは、ウェザーニュースの観測網によって衝撃波が日本列島を通過する様子が綺麗に可視化されたこと。

    これはウェザーニュースが法人向けに販売している気象IoTセンサー「ソラテナ」の全国3000基のデータを集約したものらしい。気象庁のアメダスは1300か所なので、設置密度はアメダス以上。ある種の市民科学の成果として素晴らしいものだと思う。