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ワダさん卒業

「山田五郎 オトナの教養講座」のアシスタントを務めていたワダさんが東阪企画を退社するため、チャンネルも卒業との報せ。悲しい。

登録者数49万人で、文化・教養系のYouTubeチャンネルとしては大きく成功したコンテンツの一つだと思う。番組制作会社に入った普通の20代の新人さんが、コロナ禍で仕事が激減した業界の余剰リソースを利用して、特に美術に詳しいわけでもないまま企画を立ち上げ、ここまでの番組にしたのは凄い。ワダさんが「詳しくない人」としてゆるい聞き手をつとめながら、低予算感あふれる画面編集で見せたことで、視聴者がアートを楽しむ敷居を劇的に下げた、奇跡のようなチャンネルになった。

これほど成功したワダちゃんだから敏腕テレビマンとしてこれからバリバリ出世していくのだろうと思ったら、あっさり辞めて別の仕事をするという。すげー。ただまあ、ちょっと分かるような気もする。番組が分不相応に大きくなりすぎたという感じだろうか。知らんけど。

この番組を見ているおかげで、ルネサンスから20世紀までの西洋美術史の大まかな流れを自然と覚えてしまった。ほんと凄い番組。アシスタントは五郎さんの事務所のアルバイトをしている「瓜谷さん」に交代し、番組は今後も続くとのこと。ブラタモリのアナウンサー交代みたいな感じ。

Speak Now (Taylor’s Version) !

7月7日に出るらしい。

彼女の曲名やアルバム名で見かける (Taylor’s Version) とは、過去作の再録音版である。テイラーはこれまでにアルバムを10枚出しているが、6枚目をリリースした2018年の末に、それまでのレコード会社Big Machine Recordsからユニバーサル系列のRepublic Recordsに移籍した。6枚の原盤権はBig Machineが持っていた。その直後にBig MachineはScooter Braunという人物に買収され、6枚の原盤権もBraunの手に渡ってしまった。テイラーは原盤権を買い戻そうとしたが、法外な金額を吹っかけられた。要するにBraunは音楽には興味がなく、Big Machine Recordsとそれに付随する知財を転売して儲けるのが目的だった。それでブチ切れたテイラーが、「じゃあいいわ、自分で6枚再録音して売るわよ」と言って自分が原盤権を持つ形で再録音・リリースしたのがTaylor’s Version。略してTVとも呼ばれる。対するオリジナル版はStolen Versionと呼ばれたりする。

現在までに、2nd「Fearless (Taylor’s Version)」と4th「Red (Taylor’s Version)」の2作が発売され、このたび再録3作目の3rd「Speak Now (Taylor’s Version)」の発売がアナウンスされた。収録曲の曲名にも全部 (Taylor’s Version) が付いている。基本的にオケも含めて完コピで再現しているが、一部歌詞が変わっていたりもする。TV版には新曲や別バージョンも収録され、オリジナル版よりお得なのが通例。

残る3作のアルバムも再録音される予定だが、年齢とともに声も変わっていくので、計画を完遂するのはなかなか大変だろう。それでも泣き寝入りせず、全部再録して自分のものにするという発想が凄い。テイラーは嫌なところが全くない人だと思うが、なぜか一部の人から蛇蝎の如く嫌われ、文字通り “snake” と呼ばれたり、いろんな喧嘩を売られたりいじめられたりしてきた。だが、売られた喧嘩は全て買い、その全部に勝っている。そして経験したことを曲に書いてヒットさせる。凄い人です。

「Speak Now (Taylor’s Version)」で再録されるであろう「Mean」もたぶんそういう体験から生まれた曲の一つ。”mean” に「意地悪」という意味があることと、米国でも“ぼっち”やいじめられっ子の「便所飯」があることをこのMVで知った。

Starlight (Taylor’s Version) / Taylor Swift

シングル曲ではないが、「Red (Taylor’s Version)」の中でこれも好きな曲の一つ。テイラーは情念とか怒りとか別離の悲しみを曲に転化した作品も多いが、これは爽やかで若々しいラブソング。

若い頃のロバート・ケネディ夫妻を写した写真から二人の出会いの物語を膨らませて書いた曲だという。「1945年の夏」というフレーズは日本人にとっては重すぎて、こんなふうに詞の中でからりとは使えないだろう。良くも悪くも今のアメリカ人の女の子だなという印象。

それはともかく、”Like we’re made of starlight, starlight” “Like we dream impossible dreams” という詞の繰り返しが良い。恋愛の曲ではあるのだが、不可能な夢を見ようじゃないかと言う詞は何だか科学や宇宙の世界にも良く似合う。私たちの身体を作っている水素・ヘリウム以外の元素は太古に恒星の内部で合成されたものなので、”Like we’re made of starlight” というのはだいたい合ってる。

4月20日金環皆既日食

インドネシア・オーストラリア北部で見られた。知人にも遠征組がいたり、ウェザーニュースのライブ中継で解説をする方がいたり。

今回は太陽と月の視直径がほぼ同じで、食帯上の場所によってどっちが大きく見えるかが逆転し、金環だったり皆既だったりするという現象だった。なので、第2・第3接触で月縁の谷間が1つだけ輝く典型的なダイヤモンドリングではなく、いくつもの谷間から太陽光が漏れ輝く「ベイリーズビーズ」という現象が見られると期待され、ライブ映像でもそんな感じであった。↑の動画で泉水さんが解説されているので、改めて見返すとよいと思います。

太陽も活動期に入っているため、プロミネンスがいくつも派手に出ていてかっこよい日食になった。遠征組が帰ってくると、面白い画像がたくさん見られそう。

日本でも太平洋岸でごく浅く、沖縄・小笠原ではそこそこの部分日食になった。牧野さんたちが19日まで沖縄で研究会をやると聞き、20日までいれば日食も見られるのに、などとhoiさんと話をしていたが、結局天気がいまいちだった模様。

「ロシア・ウクライナ戦争1年の評価と今後の見通し」

3月に高橋杉雄先生が日本記者クラブで行った講演。記者会見だけでなく、専門家を呼んで話してもらう研究会をJNPCでは定期的に開いているらしい。あの戦争の見方だけでなく、冷戦終結以降の国際政治の潮流の中で今回の戦争がどう位置づけられるかも、素人に分かりやすくレビューされていて勉強になる。これほどの講演を無料で視聴できるのは素晴らしい。

NATOの東方拡大がこの戦争を招いた(のだから米欧も悪い)という言説は間違いである、ロシアが欧州の一員に加わるか、それとも汎スラブ主義的な非米欧の枢軸を目指すかという二択を迫られたときに、プーチンは自らのアイデンティティの問題として、米欧が差し伸べた手を拒否して後者を主体的に選び取ったのだ、という杉雄先生の解説は重要。

ロシアが核を使った場合、米国も対抗措置としてウクライナ国内で核を使う選択肢が(ゼレンスキーが許容すれば)あり得るという話も重要。先に核を使われたときに米国がどう対応するのかは、日本の隣の核保有国である中国も北朝鮮もケーススタディとして注視するはず、バイデンは西側の首脳に意見を求めるかもしれない、そのときに我々日本国民は岸田首相の返答として何を望むのか、使うべきと言って欲しいのか、使うなと言って欲しいのか、全員が自分のこととして考える必要がある、という話。

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