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「Newton」2023年9月号

写真記事「渦巻く惑星—木星」を執筆いたしました。よろしければご覧ください。

木星のガリレオ衛星のうち、イオを除く3個には内部海があると言われている。土星の衛星エンケラドスでも水の噴き出しがみられ、今回監修していただいた関根先生によれば、エンケラドスに内部海があることは「ほぼ確実」ではなく「確定」と言いきってよいレベルらしい。なので、2020年代後半から2030年代の太陽系探査では内部海天体がアツいぜ、というような話を書きました。

ようやく納品して一息つく。毎度毎度日程を圧迫してしまって自己嫌悪に。

「Newton」2023年8月号

特集「宇宙とは何か」を担当いたしました。よろしければご覧ください。

前半は宇宙観をめぐる科学史の話、後半は宇宙論の話。今回は編集部と相談して、あえて観測的宇宙論の話は少なめにして、理論メインの構成になった。

自分の高校〜大学入学頃(〜1990年あたり)までは、宇宙論というと理論の話しかほぼ目にしなかったが、その後にCMBやIa型超新星の観測で「観測的宇宙論」が大成功し、宇宙論パラメータが決まったおかげで、最近ではともすれば「宇宙論=観測的宇宙論」みたいなムードにもなっている。ホーキングやビレンキンが「無からの宇宙創成」とか言っていた量子宇宙論ってそういえばどうなったの? というあたり、国内のポピュラーサイエンスの業界ではあんまり情報が更新されていなかったので、そのへんに誌面を割きました、という感じ。

自分が院生だった1990年代終わりごろは、どうも宇宙の密度パラメータは Ωmatter = 0.3、ΩΛ = 0.7 くらいで、足して1という、「宇宙項入りの平坦な宇宙」だ、どうしよう、ということがいろんな観測から示唆されていて、そこに1998年の加速膨張発見があって、いよいよダークエネルギーがあることになってしまって、でも量子論からは真空のエネルギーは ΩΛ より120桁くらい大きなエネルギー密度しか出てこないので、何だこの不一致は、とみんな途方に暮れていた、という雰囲気を何となく覚えている。こういう微調整問題は今ではマルチバースで説明するのが一番自然だろう、ということになっているらしいです。

監修していただいたUCBの野村泰紀先生によると、今でこそようやくそういう話ができるようになったが、2000年代前半には研究会でそういう話をしても、「哲学の話をどうもありがとう」と座長から半笑いで言われる、みたいなムードだったという。このエピソードは、先日読んだ、近年の映画に登場するマルチバースについて紹介した記事でも野村先生が話している。

ワインバーグは「マルチバースで微調整問題は解決できるじゃん」と1980年代に既に言っていたとのこと。さすが。

「Newton」2023年7月号

「ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡ベストショット」という記事を執筆いたしました。よろしければご覧ください。

M74の渦巻腕の中にボイドが見えている画像が個人的には一番好きかも。ボイドの部分は中間赤外で暗く見えているわけなので、星の材料になる低温のガスや塵が少ないということだろう。過去のスターバーストや超新星爆発で吹き飛ばされた名残なんだろうか。可視光の画像ではこういう構造にはなかなか気づかない。

「Newton」2023年6月号

特集「感動する物理」を執筆いたしました。メイン特集を一人でやらせていただくのは久しぶり。よろしければご覧ください。

といっても、題材を決めるのは担当編集さんで、自分はそれに従って書くのみなので、取り上げられているトピックに面白さを感じていただけたらそれは編集さんのおかげです。

一般相対論の等価原理について、慣性質量と重力質量が等しいことがいかに必然でないかというのを電磁気学との対比で説明する箇所は、京大の柴田大さんの講義資料を参考にさせていただきました。この説明の仕方は担当編集さんも大変腑に落ちたと言っていた。

『Newton』2023年3月号

にて、特集「ニュートン500号大全史」の有人宇宙開発・太陽系探査・天文学あたりを執筆いたしました。よろしければご覧ください。

『Newton』は1981年創刊で、スペースシャトル初飛行と同じ年。父がよく買ってきてくれて、楽しみに読んだ記憶がある。

1980年代は科学技術ブームだった。牽引したのは、ボイジャーやスペースシャトルのような宇宙の話題と、マイコン・パソコンの出現だったと思う。1980年にカール・セーガンの『COSMOS』の放映があり、1985年につくば科学万博があり、1986年にハレー彗星ブームがあった。

Newton 以前の科学雑誌というと『サイエンス』(現『日経サイエンス』)と『科学朝日』があった。Newton の成功を見て他社も追随し、1982年には『OMNI』(旺文社)、『UTAN』(学研)、『Quark』(講談社)というのが創刊された。やはり二番煎じというのはなかなか難しいようで、オカルトやSFにシフトしたりしつつ、Newton 以外は1990〜2000年代までに全部休刊になった。

以下の文献は面白い。

Newton が続いたのは、最初にブランドイメージをきっちり作ってそれを維持し続けたおかげだろうと思う。経営的にはいろいろあったし、中身のレベルも昔よりはだいぶ下げているが、今もブランド力は維持されている。大人になってこの雑誌に仕事で関わるようになるとは思わなかった。

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