2022年8月

パキスタンの洪水

「国土の 1/3 が水没」という気候大臣の談話が報じられているが、パキスタンの国土面積(78万km2)は日本の約2倍もあるので、その 1/3 が水没するというのはさすがに考えづらい。カスピ海の70%の面積を持つ湖が一時的に出現したのと同じことになってしまう。誤訳じゃないのと思うが、BBC でもそう報じている。

“Literally, one-third of Pakistan is underwater right now, which has exceeded every boundary, every norm we’ve seen in the past,” Ms Rehman told AFP news agency.

国連衛星センター (UNOSAT) の衛星データの分析によると、8/23 現在で冠水している面積は55,000km2、被災者は1,936万人(総人口の9%)となっている。大変な災害だが、「国土の 1/3」はさすがに不正確な気もする。冠水が発生している県の面積を足すと 1/3 になる、とかいう意味なら分かるが…。ちょっと謎。

ともあれ、一国で対処できるレベルを超えていそうなのは確か。

「残虐な野球用語いつまで」

朝日新聞の「声」欄にはときどき、どう考えてもこれはツッコミ待ち、もしくは担当者による晒しだろうと思うような投稿が掲載されるが、8月28日(日)朝刊のこれもなかなかの芳醇さ。

「残虐な野球用語いつまで」

「死球」という言葉が残虐だと書いたわずか11行後ろで、何のためらいもなく「死語」という言葉を使っているあたりが特に好きです。

「声」欄の場合、掲載前に新聞社から投稿者に連絡が来るので、そのチェックを通ってるということは、ネタではなく本当に千葉県在住の71歳女性が書いたのだろう。

思い出すのは、「軍靴コピペ」「春の戦没コピペ」などと呼ばれた、おそらく 2ch 発祥のミームである。少し探した感じでは、2005年の「オッスオラ極右のガイドライン」スレが最古のようだ。

323 :水先案名無い人:2005/03/23(水) 14:18:36 ID:6nz6SAmS0

先日、息子が野球部に入るのだと言って頭を丸刈りにしました。
私は野球のことは全く知りませんが、今時スポーツをするのに丸刈りにする必要があるのか・・・・
と疑問に思っていました。
謎が解けたのは、息子が「皇支援に行くのが夢だ」などと言い出してからでした。
野球とはスポーツに見せかけた極右活動だったのです。
息子が党首をやっていて保守のためにがんばるというのを聞いた時にはその場にへたりこんでしまいました。
最近始まった高校野球の大会も「春の戦没」などという名で、あの忌まわしき戦争を思い出させます。
揃いの服に身を包んだ丸刈りの若者達の入場行進を見た時、私には軍靴の足音が聞こえてきました。

(38歳 主婦)

現実の投稿がネタを凌駕する2022年。

Psyche

NASAの小惑星探査機がソフトウェアの検証に遅れを生じ、今年の打ち上げウィンドウを逃すことになり、天体到着が遅れるという記事。

内容はいいのだが、

小惑星プシケの謎を解き明かすべく、NASAが送り込む探査機「サイキ」

という訳文はどうしたものか。プシケもサイキも英語では Psyche なので、日本語のときだけ書き分けるのもなんかおかしいが、自分ならどうするか、かなり迷う。

日本で定着している外来語(特に非英語)のカタカナ表記が英語読みと違っている場合にどう書くかというのは悩むところ。SLS でもうすぐ打ち上げられる Orion 宇宙船も、今はだいたい「オリオン」と書かれるが、開発初期には「オライオン」と書くメディアも多かった。

P-3 哨戒機 (Orion) は「オライオン」と呼ばれることがほとんどで、「オリオン」とはまず呼ばれない。C-130 輸送機 (Hercules) も日本では「ハーキュリーズ」と呼ばれることが多く、「ヘラクレス」と呼ばれることはほぼない。

古代ギリシャの哲学者プラトンは英語では Plato なので、彼の名前が付いた月のクレーターも Plato である。これについては、日本の天文書籍の多くは「プラトン」ではなく「プラトー」と英語読みに寄せた表記をしていて、結果的にプラトンの名が付いたクレーターであることが分かりづらくなってしまっている。(自分は子供の頃、plateau(高地)から来た名前だと思っていた)

OSIRIS-REx は「オシリス・レックス」と書くメディアが多いが、日本の研究者の方々はもっぱら「オサイリス・レックス」と発音している。

“Florence, Italy” も罠で、フィレンツェのことだと気づかずに「フローレンス」と訳す人がたまにいる。

Psyche は久々に登場した、めんどくさい名前だな…。打ち上げが延びたのでしばらく考える時間はできたが。

抵抗器・コンデンサーの4.7

4.7 kΩ とか 470 pF とか、抵抗値や静電容量の仮数部に 4.7 をよく見かけるのはなぜだろう、と昔から思っていた。理由を説明しているサイトを見つけた。

部品のラインナップを 1.0, 1.1, 1.2, 1.3, … のように等差数列にしてしまうと、桁が上がったところで値の増加率が急変するので使いづらい。なので、等比数列にするのがよい。

精度5%の素子の場合、24段階で10倍になる、つまり10の24乗根(= 1.10069)倍ずつ増える等比数列にすると、精度と刻みのバランスが良い。このような仮数の系列を「E24系列」といい、JIS C 5063 で決まっているらしい。実際には有効数字2桁なので、

1.0, 1.1, 1.2, 1.3, 1.5, 1.6, 1.8, 2.0, 2.2, 2.4, 2.7, 3.0, 3.3, 3.6, 3.9, 4.3, 4.7, 5.1, 5.6, 6.2, 6.8, 7.5, 8.2, 9.1

となる。なので 4.7 が出てくる。

精度が10%の場合は12段階で10倍になるE12系列を使う。E24系列を1個飛ばしにしただけなので、

1.0, 1.2, 1.5, 1.8, 2.2, 2.7, 3.3, 3.9, 4.7, 5.6, 6.8, 8.2

の12段階。やはり 4.7 が出てくる。

精度が20%の場合は6段階で10倍になるE6系列を使う。

1.0, 1.5, 2.2, 3.3, 4.7, 6.8

精度が20%より悪い場合はE3系列を使う。

1.0, 2.2, 4.7

結局、どの系列でも 1.0, 2.2, 4.7 は登場する。そんなわけでこの3つの仮数は抵抗値や静電容量としてよく目にするということのようだ。

E系列とか習った覚えがない。電気電子方面の人にとっては常識なのかも。

白河の関

を深紅の大優勝旗が越えたとのこと、かつて仙台在住だった者としてめでたく思います。

ところで、2004年に駒大苫小牧が優勝しているので、その時点で緯度的には「白河の関越え」を果たしていたと思うのだが、一気に津軽海峡まで越えてしまった場合はノーカウントなんでしょうか。高校野球難しい。

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