• 物理学賞は電気回路における巨視的量子トンネル効果とエネルギーの量子化の発見。

    ジョセフソン素子など、巨視的と言えるスケールでも量子論的な効果が現れる現象を発見した業績に対してということらしい。将来の量子コンピューターの素子として期待されている超伝導量子ビットにも関連する業績らしい。

    加藤岳夫さん(東大物性研)の連ツイが参考になった。埋め込みだと連ツイが見えないので web ブラウザで。

    天文宇宙来るかなぁと思ったけど、そういえば今年は量子力学100周年だった。そういう要因もあっての選考かも。


    化学賞は金属有機構造体 (MOF) の開発。

    MOFは金属のイオンと有機分子が組み合わさった多孔質の物質で、ゼオライトや活性炭のような素材と違い、穴のサイズを精密にコントロールして設計できる。特定の分子だけを通すフィルターや特定の分子を吸蔵するデバイスなどに使える。CO2の分離・貯蔵とか水素の貯蔵など、脱炭素方面の用途で既存の素材に取って代われる良い性質がありそうというものらしい。


    何となくの印象だが、近年の物理学賞・化学賞からは、科学の社会性みたいなものをノーベル賞委員会が重視するようになったという、かなりはっきりした変化を感じる。私たちの社会を大きく変えた、またはこれから変えると期待される、もしくは社会問題の解決に寄与する何かに関わる発明・発見が授賞対象になっているような。2021年の真鍋さんたち(気候変動)や昨年のAI祭りを見ていてもそう。2022年のベル不等式の破れにしても、これ自体で自然界の深い性質を明らかにした仕事ではあるが、今年の巨視的量子効果と同様、量子もつれが将来の量子コンピューターを成立させる本質的な性質だという観点から選ばれた、という感じがある。

    反面、短期的に何かの役に立つわけではない、いわゆる「純粋」な基礎科学(宇宙とか笑)に対しては委員会の気持ちが少し離れているのかな、という感じ。2020年以降のコロナ禍・戦争・ポピュリズムなどのせいでモードが変わって、「学問も社会と無縁ではいられない」といううっすらとした圧力が増しているのかなー。個人の感想です。

    これを思い出した。

  • 末梢性免疫寛容に関する発見で3氏が受賞。

    免疫システムではいろんな抗原に対応できるように、遺伝子組み換えによって膨大なバリエーションの免疫細胞を生み出すしくみがあるが、そうすると自分自身を攻撃してしまうような望ましくない免疫細胞も生まれてしまう。そういうダメな免疫細胞はちゃんと壊して表に出さないしくみもあって、免疫寛容と呼ばれている。生物ってほんと巧妙ですよね。神様なしで、有機分子のスープを数十億年がちゃがちゃやってるうちにこんなしくみが生まれてくるというのが本当に不思議。

    免疫寛容のしくみが何らかの理由で故障すると、いわゆる自己免疫疾患という病気になる。今回は免疫寛容の中でも末梢性免疫寛容というしくみを解明した3氏が受賞した。

    発表の生配信でシモン・サカグチという名前を聞いて、日系外国人の研究者かと思ったら、「志文」さんというお名前だった。


    明日は物理学賞。昨年は物理学賞と化学賞がAI祭りだった。素核宇宙と物性が隔年という法則ももはやない。宇宙系は2020年のブラックホールが最後なので、そろそろ期待。(と、昨年も書いていた)

    天文・宇宙物理での個人的候補は昨年たくさん書いた通り。

    大規模構造の発見で Kirshner, Geller, Gunn の3名というあたりがいいのでは、と個人的には思っている。Huchra さんは残念ながら亡くなってしまったので。

    素粒子は2015年のニュートリノ振動が最後。もう標準模型の範囲では一通り受賞してしまって、標準模型を超える物理の成果待ちというところか。『理科年表』の「物理学上のおもな発明および発見」のページを見ても、素粒子で未受賞の業績はもうあまりない感じ。


    ここしばらく家の用事がちょこちょこ入り、仕事が進まない。稼がないといけないのに。睡眠時間も不規則になっていろいろ不調。

  • 10月3日発売の11月号にて、特集「天文宇宙の今がわかる キーワード25」の宇宙開発・太陽系探査編を執筆いたしました。よろしければご覧ください。

    星ナビ 2025年11月号 – アストロアーツ

    サブオービタル・地球低軌道から太陽系探査まで、「スペース」の科学の最新事情をまとめました。

    併せて、書評欄「ほんナビ」では拙訳書『見たこともない宇宙』が紹介されています。こちらもよろしければご覧ください。

    「星ナビ」創刊25周年、通巻300号とのこと。おめでとうございます。前身「スカイウオッチャー」誌から版元を変えての新創刊も覚えているが、あれから早、四半世紀。「スカイウオッチャー」は17年続いたそうなので、「星ナビ」の歴史はすでに前身誌を超えている。

    ということは、「星ナビ」創刊と Perfume 結成は同じ年ってことか。

  • 「暑さ寒さも彼岸まで」というのはやはり正しい。そういえば、墓参りは Perfume 東京ドームの日の午前中に行った。


    なんかずっと虚脱感と感傷を引きずっている。YouTube で昔の Perfume の動画やMVを見続けてしまう。自分でも意外。仕事をしなければいけない。

    宇多丸氏のコメント(18:00から)と、その書き起こし。

    解散じゃないのだから泣くような話ではないし、休めるときに休む方がいい、と。そんなことよりお前らはアルバム「ネビュラロマンス前篇」「同 後篇」が出た時点でもっと騒げよ、あれ最高峰だぞ、と。確かに。コンセプトアルバムということで、どこかイロモノ扱いされてしまっている感があるが、改めて聴くといい曲の宝庫なんだよな。

    掟ポルシェ氏のコメント。

    Perfume との馴れ初めなど、昔のお話が貴重。2006年4月にロフトでやった対バンのときに不思議なHIPHOPダンスの時間があったのは覚えている。あれが「Perfume の掟」の原型と思われるが、あれは元々高校の課題で三人が作った創作ダンスだという。

    とーやま校長のライブ配信。

    ライブの感想、曲に関する解釈や見解が俺の感覚と完全に一致していて面白い。ジャスミン茶。

    2020年の中止になったドーム公演のときにかしゆかコスプレのお姉さんと会った女の子2人が、5年ぶりに再び東京ドームでお姉さんと再会。2020年も今年も、本物のかしゆかに会えたと信じているというお話。

    ライブ会場にはいつもコスプレの人がたくさんいるが、中には凄いレベルで再現している人が確かにいる。

  • 日本物理学会の賞で「素粒子メダル」というものがあり、先日の学会秋季大会で授賞式があったことを知った。

    同級生IさんからのLINEで知ったのだが、受賞者の一人である小池正史さん(宇都宮大学)は小学校・中学校の同級生。おめでとうございます!

    標準模型ではレプトンの種類は不変だが、標準模型を超える物理としては、ニュートリノ振動と同じように、電子とミューオンが互いに変わるような過程を考えることができる。小池君たちは原子核の中でこうした変換が起こる確率を理論計算したということらしい(間違っていたらすみません)。20年くらい前の研究だが、こういう現象をとらえようとする実験もいろいろあって、今でも指針として彼らの理論が使われていると。

    小中学校を通じて、小池君(みんな「こいやん」と呼んでいた)は我々の学年で一番頭が良かった。同じクラスになることは一度もなかったが、あるとき放課後に小池君がうちの教室に来て、僕に『元素の事典』という本を貸してくれた。すごく面白い本で嬉しかった思い出がある。あと、大学か大学院時代に、小池君に誘ってもらってお友達やゼミの先生と一緒に築地の海上保安庁水路部を見学したことがあった。何を見たのかはあまり覚えていないが、地図大好きっ子だったのでこれも嬉しかった記憶がある。我が母校の誇りであります。