よくよく見れば、これだけ大きな吊り看板なのに支持部の構造が存在しないとか、8時 (VIII) の V の形がおかしいとか、小さな文字がぐにゃっているとか、奇妙な3本目の針があるとか、さまざまな粗が見つかる。しかし絵全体を眺める限りは破綻しているようには全く見えない。いかに私たちの視覚が「全体的な雰囲気」を把握することに特化しているかを思い知る。
時計ファンにおなじみの蘊蓄の一つとして、「ローマ数字の文字盤は4時が IV ではなく IIII のものが多い」という話がある(「時計職人の4 (watchmaker’s 4) 」とも呼ばれる)。なので、ローマ数字の文字盤を見るとまず4時に目が行く。そこで画像の破綻に気づいた。
鋳造で作る場合、4 を IIII にすれば、IIII, VIIII, XII の3種類の型だけあれば、これに部分的に金属を流し込むことで12種類全ての数字を作れる。IV があるとそうはいかなくなる、という説(この記事には「ただし9時も VIIII にする必要がある」と書かれているが、9時は XI を逆さに使うことにすれば、IIII, VIII, XII の3種類の型で済む気がする。)