• 前々職でお世話になった方の退職・還暦祝いのパーティーに参加。実際の退職は3年前だが、コロナ禍で対面での会合ができず、延び延びになっていたのを改めてやりましょうとなったもの。

    学生上がりの自分に、会社員としてチームで働くとはどういうことか、ものを作るときにはどういうふうに作るのか、といったことを一から教えてくださった、まさに薫陶を受けた師であり、そのことへの感謝を少しでも、直接伝えることができて良かった。思い出話にも花が咲いたし、初対面の方々、久々にお会いする方々とも交流できてありがたい機会だった。

    ある程度以上の年齢になると、やはり常に明るさやユーモアがあるかどうかというのが大事になってくる。年上の人間なんて、いるだけでその場を緊張させるものなので、柔らかく朗らかでいることは本当に大事。そういう面でも自分がずっとお手本にさせていただいた方だった。これからもどうかお元気で。

    会費がそれなりのお値段だったので下の方の人たちが来ていなかったのはまあしょうがないとも思ったが、あれほどの功労者なのに会社のNo.1もNo.2も来ていないのには少し驚いた。まあ、万事がそういう感じだから、今ああいう感じなのだろう。以下略。(言わなくていいことを一言言わずにいられない人)

  • Perfume 8枚目くらいのオリジナルアルバム。円盤は10/30発売、配信は9/20から。40日も待てないのでまず配信で購入した。これはね、名盤ですよ奥さん。前作「PLASMA」より好きかも。

    コンセプトアルバムと銘打っている通り、世界観が統一されていて聴きやすい。ざっくり言えば ’80s・スペーシー・ちょっとファンク。「Time Warp」「ポリゴンウェイヴ」の頃からの傾向を引き継いでいて、たぶん中田先生の中のトレンドとして、2010年代からの Vaporwave、Future Funk、Synthwave といったレトロフューチャー系音楽の流行にヒントを得ているのだと思う。といっても「ヒントを得ている」くらいのもので、作品自体がそういうジャンルに属する曲というわけでは全くない。そもそも歌モノですしね。もっと独特の、良い意味で異物感のある振り切れた音楽になっている。

    このアルバムもそうだが、近年の Perfume はヴォーカルにエフェクトをかけた曲はもうほとんどない。ほぼ生声。あと、これは昔からだが、彼女たちは腹から声を出さない。熱唱しない。「座ってレコーディングする」といつも三人が言っている通り。結果的にピッチが不安定に揺らぐところが出てくる。それがいい。

    今回、英語詞の曲も多いが、その発音も完全にジャパニーズイングリッシュで、英語としてはあんまり上手くない。そのたどたどしさがいい。

    今の J-POP は「束ものアイドル」の時代が去って、技巧と歌唱力の時代にまた戻っていると思う。Ado とか藤井風とか YOASOBI とか、みんなやたら上手いし、ボーカロイドにしか歌えないようなすさまじいリズムと旋律と転調の曲を生身の幾田りらに歌わせたりしている。それもいいんだけど、技巧・歌唱力じゃないところにも感動は生まれるものでしょ、むしろ白紙で提示する方が聴き手がいろんな感情を乗せやすくないですか? という問いを中田ヤスタカは昔からずっと投げかけていて、この「ネビュラロマンス 前篇」では彼の試みがかなり良い到達点を迎えているように思った。

    Perfume の三人の声には危うさや揺らぎがあって、切ない。母親が子供を寝かしつけるときに歌う、決して上手くない子守歌のような、あるいは放課後に女子高生が独り、屋上で夕焼けを見ながら口ずさむ歌みたいな、侘び寂がある。フジファブリックの「若者のすべて」が心を揺さぶるのは、志村正彦のヴォーカルが上手いからではないですよね。あれに近い感覚を今の Perfume の声は持っている。不完全性や壊れやすさを愛でるような、今の J-POP の主流ではないけどきわめて日本的な美意識を中田先生は持っていて、それをうまく具現化したのがこの「ネビュラロマンス 前篇」という気がする。なので、名盤です。

    あと、これは三人の声の神秘なのだが、Perfume の三人は声質がかなり違うにもかかわらず、声をきっちり重ねることができる。完全に重なると、三人のどの声とも違う、第四の人格みたいな別の女の子の声が出現するんですよ。光の三原色を混ぜると白になるみたいな。で、ちょっとだけずらすと、白の端っこに三つの色がちょっとだけ見えたりする。このアルバムの曲でも、完全にユニゾンさせるところと、それぞれの声の個性が際立つところが代わる代わる出てきて、それを追いかけるだけでも楽しい。

    レコーディングでは一人ずつフルコーラスを録って中田氏がエディットすると言っていたので、声の重畳は機材の中でやっているのだと思うが、三人は生で同時に発声するときも完全に重ねることができると言っていた。キリン「氷結」のCM撮影の時だったと思うが、「合わせすぎると一人の声みたいに聞こえてしまうのでわざと少しだけずらす」と言っていたことがある。技巧とは別の評価軸でやっていると書いたが、本人たちのスキルを見れば歌もダンスも技巧の塊みたいな人たちである、という点も忘れてはならない。

    J-POP のメインストリームにはたぶんならないけど、世界の一部で非常に濃いファンが付くような音楽を、中田ヤスタカと Perfume にはこれからも作り続けていって欲しい。「後篇」も楽しみすぎる。

    公式 YouTube チャンネルでアルバム全曲が再生リストとしてフル公開されている。何という大盤振る舞い。もはや楽曲自体で売上を立てる時代は終わったということか。

    今回は本当に全曲いいのだが、「Cosmic Treat」「メビウス」がかなり好き。「メビウス」は JAXA か国立天文台のプロジェクトの公式ソングに今すぐ採用すべき。

  • にて、第2特集「素粒子物理学の未来」を執筆いたしました。監修は村山斉先生です。よろしければご覧ください。

    科学雑誌ニュートン最新号(2024年11月号) 「発達障害の脳科学」 | ニュートンプレス

    米国で素粒子物理学研究の予算を統括しているのはエネルギー省で、どういうプロジェクトに金を付けるかという「骨太の方針」的なものを下部の専門家委員会で5年ごとに決めている。その委員長に村山さんが就任して、昨年末に最新の報告書を取りまとめた。

    この報告書に基づいて、今後の素粒子物理がどういう方向に行くのかをまとめた記事。素粒子分野にどういう未解決問題があるかという科学の話と、もう少し政治的な、限られた予算で米国は今後何をやり、何をやらないのかという話を先生に聞くことができ、大変面白く、勉強になった。

    専門家会議とはいえ、米国政府の方針を決める重要な委員会のトップを村山さんが担ったということ、つまり、そういう役目をやってほしいと研究者コミュニティから頼みにされ、実際に全うできる人が日本にいる、というのも誇るべきことだろうと思います。

  • 8月はいささかくたびれてしまって、充電のために福岡へ。九州方面の友人と会う用事もあったので。

    9/23(月)

    飛行機は前回福岡に行ったとき以来か。往復ともスターフライヤー。

    羽田は搭乗待ちのスペースに充電用のコンセントがたくさん用意されている。USB-Aの方で携帯を充電したが、残量がなかなか増えないのでよく見たら、5V1.5Aだった。これはいけん。2.4A対応のUSB充電器をACの方に挿して充電。

    昼過ぎに福岡に着いてお友達と昼食。たらふく食べた。

    博多駅近くのアパホテルに宿泊。なんか建物に見覚えがあると思ったら、2016年11月の COSMIC EXPLORER ツワーのときに泊まったのと同じアパだった。

    9/24(火)

    太宰府方面へ。どちらかというと太宰府天満宮に隣接する九州国立博物館が目当てだったが、まさかの休館日。残念。

    太宰府天満宮の参道では梅ヶ枝餅というのを売っていて、焼きたてで美味い。参道沿いのあらゆる店で売られているのだが、どこが元祖とか本家とかはなく、public domain になっているらしい。値段も同じ。

    良い天気に恵まれた。秋の空気に変わって過ごしやすいが、日射は強い。

    本殿は修理中らしく、建築家の方が設計したという仮殿に参拝する形になっていた。屋根に木が生えている。

    狛犬の黒目に石が嵌まって飛び出しているというのは初めて見た。

    飛梅。道真公が大宰府に左遷されたときに京都の屋敷から菅公を慕ってびゅーんと飛んでここに来たという伝説の神木。後ろが工事中の本殿の仮囲い。臥牛像には観光客がたくさんたむろしていて写真を撮れなかったが、飛梅は仮殿の陰になっているせいか、誰も注目していなかった。

    本殿の裏手に梅林があったので、やはり梅の季節に来るのが良さそう。混むんでしょうけど。

    裏手にあったクスノキ。クスがたくさん植わっているとなんか九州っぽい感じがする。

    関東にもあるが、やはり北緯35度以南の暖地に多いようだ。

    「梅の種」納め所。梅の種には天神様が宿るらしい。なんかこういうのは、あるとき誰かが思い付きで言い始めたのが、予想外にみんなに刺さりすぎてやめられなくなった風習という感じがする。風習というのは9割くらいそんな起源なのかもしれない。

    西鉄太宰府駅からバスに乗って大宰府政庁跡へ。乗ったバスが政庁跡を通らないやつだと勘違いして、あわてて途中で降りて歩いた(降りなくてよかったらしい)。

    太宰府市役所前の喫茶店でナポリタンを食べる。美味かった。ナポリタンというと、子供の頃に土曜の昼飯で母が作ってくれるイメージ。普通にケチャップで作るとどうしても酸っぱくなるのであまり好きではないのだが、このお店のは美味かった。レシピを知りたい。

    1km弱歩いて大宰府政庁に着。律令時代の官庁名としての「大宰府」には点が付かないと言いつつ、この標柱は「太宰府」となっている。ブラタモリでもタモリに突っ込まれていたところ。

    遺跡あるあるだが、日陰が全然ないので暑かった。「ななすけの散歩録」公式バケットハットが大活躍。歩を進めるたびに雑草の中から大量のバッタが飛び立つ。

    昭和に入って整備されるまでは普通に田んぼだったらしい。今でも、遺跡の北隣は普通に田畑になっている。小字として「大裏」(=内裏?)という地名が残っていたことを示す標柱。

    こんな人けのない遺跡にすら排除ベンチが。まあ今はベンチと言ったらこのタイプしかないのかもしれないが。行政の論理はよく分からない。

    夜はお友達と会食。神戸でやった Perfume Costume Museum 展の図録をずいぶん前に買ってもらっていて、ようやく受け取ることができた。こちらからも貢ぎ物を提供。二人で Perfume 話をしていたら店の有線で「Time Warp」がかかって驚いた。

    9/25(水)

    雨の予報だったので遠出はやめ、大濠公園へ。福岡市美術館で絵を見る。入場料200円で常設も特別展も見放題。佐伯祐三、藤田嗣治、ダリ、ウォーホル、シャガール、ミロなどなど、良い作品がたくさんあって楽しい。藤田の裸婦の輪郭線、面相筆で描いたというが、ヤバいほど細い。撮影は基本禁止だが、人が全然いないので間近で見られる。

    福岡大濠郵便局の建物がなかなか良いモダニズム建築だった。地方の大都市にはこういうのがあるから油断できない。

    天神で買い物などして博多駅に戻り、地下街にある「カフェ・ミエル」でホットサンドとカフェオレを食す。マスタードエッグのホットサンドがめちゃうま。店の雰囲気も良い。ただしお値段もなかなか。この2品で1,800円くらいした。

    19時発の飛行機で20:30に羽田着。早い。

    福岡は住みやすそう。東京から離れているおかげで、何もかもが圏内で完結できて、東京近辺のとげとげしい情報からも程よく隔離されている。仙台も地方の中核都市として似たところがあったが、福岡の方が温暖なのが良い。

    市営地下鉄の改札機がVISAのタッチ決済で通れるようになっていて、これを使うと何度乗っても最大640円というのも進んでると思った。

  • 9月は一息ついた感があったが、結局それなりに忙しい。まあお仕事がないよりはある方がはるかによい。

    死にたいと思っている人のところにドローンでぶーんと近づいていって、スピーカーで呼びかけて引き留めるらしい。「大丈夫ですかー」とか言うんだろうか。ディストピア感が凄い。

    夜に見回るのは見回る側の方が危険だし、といった事情は分からなくもないが、絶望して彼岸へ行こうとしている人と対話しようというときに、機械越しのやり取りなんかで繋ぎ止められるもんだろうか。「あー、最後の最後まで、俺は人から温かみのあるストロークをもらえない人間だったな」と思われやしないか。なんか、死のうと思った経験がない人の発想という気がする。知らんけど。