特集「レジェンド科学者たちの思考でたどる 物理総入門」を執筆いたしました。第1特集を一人で担当するのは初めて。だいぶ遅れてしまい、編集さんにご迷惑をおかけしてしまった。
Newton (ニュートン) 2022年 08月号 [雑誌]
物理学者の伝記を要素として含む記事なので、近代以降の物理学史も改めて勉強し、監修の有賀暢迪さん(一橋大学大学院)にもいろいろ教わった。
現在流布している、教科書に載っているような物理学の発展史の話は、実はかなり後付けで綺麗に整理された後のものだということがよく分かった。論文や成果発表の時系列を細かく追っていくと、もうぐちゃぐちゃです。Aさんがこういうアイデアを出して、それを見てBさんがこれを出して、…というふうに一本道で歴史が進むことはない。複数のアイデアが同時多発的に出たり、後戻りしたり、否定され続けたり、実に混沌としている。マクスウェル方程式も、マクスウェルが最初に出したバージョンでは9本だか20本だかの連立微分方程式群になっていて全然美しくなかったのを、後にヘビサイドやヘルツが整理してあの4本になったとか、そういう話があちこちにある。
一般向けの記事では当時の混沌まで紹介することはなかなかできないが、科学史の文献を見ると、伝説と正史の違いに関する話がたくさん出てきて面白い。