これはいいアルバム。名盤かもしれない。前作『Future Pop』は、今思えば収録曲にあまり統一感がなくて、海外で流行っているからという理由でフューチャーベースを取り入れたりして地に足がついていない感じがあったが、このアルバムはやりたいことの方向性が分かりやすい。
以前 WOWOW の番組で、中田ヤスタカは自分が海外進出する可能性は全くないと言っていた。ジャーマン・テクノやフレンチ・エレクトロみたいに、土地の名前が付いたジャンルとして世界から認知されるような日本発・東京発の音楽を作りたいから、海外に拠点を移すことには興味がないという話だった。
Perfume の場合、CAPSULE などの自身の活動とは違い、「やるからには売れないと」というプロデューサーとしての意識があるせいか、やや不自然な海外志向へとここ数年迷走していた気がするが、今回の『PLASMA』で、海外の真似ではない日本発のいい音楽をもう一度やろうという場所に戻ってきたように見える。MIKIKO先生は「チョコレイト・ディスコ」の頃、NY留学をしていて「外国人と日本人では身体の特性が違うのに、自分が外国人のダンスを真似しても意味がない」という境地にたどり着いたそうだが、中田先生もようやくそこに到達したのかな、と思った。
中田先生はシティポップや Vaporwave、Future Funk の流行を見て、海外のトレンドを無理して追わなくても、自分がいいと思うものを作り続けていれば勝手に世界が自分を見つけてくれる時代になった、と改めて気づいたのかもしれない(知らんけど)。『PLASMA』を聴いていると、自信を持って自分の好きなものに原点回帰した中田ヤスタカを感じる。詞の端々にもそれが表れているし、昔はほぼ全て英語だった Perfume の曲のタイトルに日本語(カタカナ表記)が増えているのも、日本発の良いものを作っているという自負が反映された結果のように思える。
フュージョン風味でおっさんホイホイな「Spinning World」のかっこよさは言うまでもないが、後半の柱になっている「Drive’n The Rain」が素晴らしい。6分超えでアルバム最長の収録曲。中田先生が本気で作ったシティポップという感じ。三人の高くて細くて平板なヴォーカルをこの懐かしい音に合わせるというのが非常に新しい。おそらくのっちかなと思うが、オクターブ下の低音で歌うコーラスも混ざっていてどきどきする。
「ハテナビト」も「575」を思い出させる希有な曲。韻を踏んだ五音の言葉を八分音符で刻んで4拍4小節に5個入れている。気持ちいい。
「アンドロイド&」は四つ打ちダンスチューン。「Party Maker」「FAKE IT」と並んでライブで爆上がりする曲になりそう。
ラストが「さよならプラスティックワールド」で終わるというのもいい。「みんなのうた」のバージョンが extend されて2番の歌詞が足されている。ネットに溺れるな、自分の感覚を信じてリアルを生きようというメッセージを残して、ほとんどアウトロもなしに音が消えてなくなる。儚い。