「TIME」のPerson of the Year

にテイラー・スウィフト。過去の選考では政治家や経営者、活動家などが多く、芸術分野からの選出は初とのこと。

https://time.com/6342806/person-of-the-year-2023-taylor-swift/

MVもどれもいいが、テイラーのライブ音源やライブ映像は特に良い。ライブ行きたいなと思って2月のチケットを取ったのもこれらを見聞きしたのが理由だった。テイラーの何がそんなに凄いのか分からんというお前らに、俺のYouTubeミックスリストからピックアップして説明してやんよ。

なぜ “Archer” ではなく “The Archer” なのか不思議だったが、彼女はいて座生まれなのでそれに掛けているようだ。公私ともに打ちのめされ、いろんな人が離れていったり敵になったりした、という絶望の曲だが、曲の終わりに “Who could stay?”(誰がそばにいてくれるの?)のリフレインから “You could stay”(あなたはそばにいてくれるよね)に変わるところが、暗闇の中に救いの光が見えるかのような展開で素晴らしい。観客もここで大歓声。私たちはテイラーの味方だ、というSwiftieたちの意思を感じる。

飲んだ帰りにたぶんタクシーに男と二人で乗って、「私、コーネリア・ストリートに部屋を借りたの」と話すところから始まる曲。物語の時制が分かりづらいが、おそらく男との恋愛は始まったばかりで、なのに破局してしまうところまで想像して恐れている、みたいな曲らしい。”I’d never walk Cornelia Street again”((もしこの恋が終わってしまったら)コーネリア・ストリートを歩くことは二度とできないだろう) “I get mystified by how this city screams your name”(この街があなたの名を叫ぶことに戸惑ってる)という詞を絶叫するように歌うのがいい。テイラーがコーネリア・ストリートに住んでいたのは事実で、ファンが聖地巡礼しているらしい。

もし私が男だったら、今の地位までもっと早く来られたし、こんなにいろいろ言われないはずよね、という曲。MVではテイラー自身が特殊メイクで男装して、もてはやされる男の典型的なクソさを演じている。アコギでこの曲をやると、普通にギターをギターとして弾く以外に、ボディをぽこぽこ叩くプレイやベースっぽくコードを弾く奏法も見られて、弾き語りの技術の高さに感動する。

彼女 (Betty) がいる高校生男子 (James) が、年上の別の女に誘われてひと夏の浮気をしてしまったのを彼女に謝る曲。カントリーミュージック出身のテイラーの良さが演奏にも作曲にも表れている傑作。この曲が収録されているアルバム「Folklore」には、Bettyの視点の曲 (“Cardigan“) と年上女の視点の曲 (“august“) も入っていて、3曲の世界がつながっていることが詞から分かるようになっている。こういう仕掛けを思い付いて、それらが全部いい曲なのが凄い。

「あああ ああっあー」で有名なやつ。クソみたいな世間に泣かされる女性たちを励まし、奮い立たせる曲。あいつらがあたしに投げつけた煉瓦で城を建ててやるわ、という。”The Man” もそうだが、男女格差を描いた曲をテイラーは昔からいくつも作っていて、どんだけ不当な叩かれ方をしてきたんだよと思う。このへんも Person of the Year に選ばれた理由の一つであるのだろう。

詞の英語が分かりやすい曲。「彼を愛するのは新車のマセラティで行き止まりの道を走るようなもの 風より速く、罪深いほど情熱的で、突然終わりを迎える」。彼女の曲には車の描写が非常に多く出てくる。相当な車好きだと思われる。

フィル・コリンズのカヴァー。フィル本人がこの動画のコメント欄に激賞のコメントを残している。テイラーにはぜひカヴァーアルバムも出して欲しい。

コールドプレイのカヴァー。テイラー叩きの言説の一つに「歌が下手じゃん」というのがあったらしく、今のテイラーの歌唱力からは想像ができないが、13年前のこの動画を見ると、なるほどこういう感じだったのか、と分かる。初々しくて好きだけど。この頃から今に至るまで相当ボイトレをやったのだろう。初期のテイラーが使っていたこの “Taylor” の象眼入りのギターもいい。このTaylorは米国のギターメーカーの名前。

The 1975 のライブにサプライズ出演して弾き語りしたときの映像。この背の高さ! ヒールを履くとたぶん190cmを超えている。彼女は自分は背が高すぎて可愛くないと思っているようで、ここで披露した “Anti-Hero” でもまさにそんなことを歌っている。MVでも自分を巨人として描いている。テイラーは歌の切れ目でわざとマイクから顔を外してキメ顔を作る癖があって、この映像でもそれが見られる。

「男をとっかえひっかえしている」などと、実際の自分と全く違うことをゴシップ記事に書かれて傷付いたときに、「でもこういう記事に書かれてるキャラ(恋多き女)を曲にしたら面白くない?」と思い直して書いたのが “Blank Space” だ、という話を冒頭でしている。サビの部分にある “Got a long list of ex-lovers” の後半がなぜか “Starbucks lovers” に聞こえるのだが、”Blank Space Starbucks lovers” で検索するとたくさんヒットするので、向こうの人にもそう聞こえるらしい。

2019年にビルボードの Woman of the Decade を受賞したときのスピーチ。彼女が受けてきた不当な扱いがどういうものだったか、それらとどう闘ってきたかが分かる。15分以上あるスピーチだけど構成が完璧で、彼女の聡明さも伝わってくる。

ちょうど動画が13個になった。13はテイラーのラッキーナンバー