オミクロン株対応ワクチンの動向

変異し続けているのにいつまでも Ver.1 を使い続けているのもどうなんだ、ということで2社のプレスリリースを覗いてみた。

ファイザー/ビオンテック

6/25 付けでプレスリリースが出ている。

Pfizer and BioNTech Announce Omicron-Adapted COVID-19 Vaccine Candidates Demonstrate High Immune Response Against Omicron | Pfizer

オミクロン株と呼んでいる変異株にはおおざっぱに BA.1, BA.2, BA.4, BA.5 がある(細かく分けるときりがないが)。ファイザーは BA.1 の遺伝情報を使った1価ワクチンと、BA.1 対応+従来型を混合した2価ワクチンの2種類について臨床試験を1月から続けている。すでに第2相・第3相試験までやっている。

3回接種済みの被験者に4回目としてこれらの新ワクチン候補を接種した場合、1価ワクチンでは、BA.1 に対する抗体価は従来型ワクチンの2.23〜3.15倍になるという結果。2価ワクチンでは1.56〜1.97倍。

米国で新ワクチンの緊急使用が許可されるためには、従来型に比べて1.5倍以上抗体価が高いものでなければダメという条件があり、2つの新ワクチン候補はこの条件をクリアしている。

また、接種から1か月後の BA.1 に対する抗体価は、1価ワクチンで接種前の13.5〜19.6倍に高まり、2価ワクチンでは9.1〜10.9倍に高まる。

ただし、BA.4, BA.5 に対する抗体価の上昇は BA.1 に対する値の 1/3 くらいにとどまるとの結果。BA.4/5 に対する試験は今後数週間続けるとのこと。

モデルナ

モデルナは 7/11 にプレスリリースを出している。

Moderna’s Omicron-Containing Bivalent Booster Candidate, mRNA-1273.214, Demonstrates Significantly Higher Neutralizing Antibody Response Aga

モデルナの従来型ワクチンは mRNA-1273 という名前だが、現在は従来型とオミクロン株(おそらく BA.1)の遺伝情報を使った新ワクチンを混合した2価ワクチン候補 「mRNA-1273.214」を臨床試験している。さらに、従来型と BA.4/5 の遺伝情報を使った新ワクチンを混合した別の2価ワクチン候補「mRNA-1273.222」も並行して試験している。「市場の好み」に対応するために2種類を並行試験しているとのこと。

mRNA-1273.214 の臨床試験では、BA.4/5 に対する接種後の抗体価が従来型ワクチンの1.69倍になったとの結果。また接種1か月後の抗体価の上昇は、従来型を接種した場合は接種前の3.5倍に高まるのに対して、mRNA-1273.214 では接種前の6.3倍に高まるとのこと。mRNA-1273.222 の試験結果はプレスリリースとしてはまだ出ていない。

両社とも、認可が下りて製品として出荷されるのは秋頃という見通しのようだ。日本の4回目接種には間に合わず、使われるとしても5回目以降というところか。おせぇな、と言いたくなるが、これでも旧来の「鶏卵で抗体を増やして…」とかやっていたワクチン開発に比べれば画期的に速いのだろう。設計図にする mRNA を新しい株のものに取り替えるだけだから、原理的には全然速くできるはず。