「Newton」2023年8月号

特集「宇宙とは何か」を担当いたしました。よろしければご覧ください。

https://honto.jp/netstore/pd-magazine_32559650.html

前半は宇宙観をめぐる科学史の話、後半は宇宙論の話。今回は編集部と相談して、あえて観測的宇宙論の話は少なめにして、理論メインの構成になった。

自分の高校〜大学入学頃(〜1990年あたり)までは、宇宙論というと理論の話しかほぼ目にしなかったが、その後にCMBやIa型超新星の観測で「観測的宇宙論」が大成功し、宇宙論パラメータが決まったおかげで、最近ではともすれば「宇宙論=観測的宇宙論」みたいなムードにもなっている。ホーキングやビレンキンが「無からの宇宙創成」とか言っていた量子宇宙論ってそういえばどうなったの? というあたり、国内のポピュラーサイエンスの業界ではあんまり情報が更新されていなかったので、そのへんに誌面を割きました、という感じ。

自分が院生だった1990年代終わりごろは、どうも宇宙の密度パラメータは Ωmatter = 0.3、ΩΛ = 0.7 くらいで、足して1という、「宇宙項入りの平坦な宇宙」だ、どうしよう、ということがいろんな観測から示唆されていて、そこに1998年の加速膨張発見があって、いよいよダークエネルギーがあることになってしまって、でも量子論からは真空のエネルギーは ΩΛ より120桁くらい大きなエネルギー密度しか出てこないので、何だこの不一致は、とみんな途方に暮れていた、という雰囲気を何となく覚えている。こういう微調整問題は今ではマルチバースで説明するのが一番自然だろう、ということになっているらしいです。

監修していただいたUCBの野村泰紀先生によると、今でこそようやくそういう話ができるようになったが、2000年代前半には研究会でそういう話をしても、「哲学の話をどうもありがとう」と座長から半笑いで言われる、みたいなムードだったという。このエピソードは、先日読んだ、近年の映画に登場するマルチバースについて紹介した記事でも野村先生が話している。

https://realsound.jp/movie/2023/07/post-1365003.html

ワインバーグは「マルチバースで微調整問題は解決できるじゃん」と1980年代に既に言っていたとのこと。さすが。


Comments

“「Newton」2023年8月号” への1件のコメント

  1. […] 今売りの「Newton」の記事をやるにあたり、初めて文字起こしにツールを使ってみた。zoom取材のレコーディング素材(mp3)を、hoiさんから教わった Whisper Transcription に読み込ませてテキスト化。 […]