EHTへの異論

三好さんたちの例のあれが asahi.com の記事になっていた。今朝の紙の朝刊には載っていなかった。

光のリングは幻だった? ブラックホール「世界初の画像」に異論:朝日新聞デジタル

論文は ApJ に5月に accept されて出版待ち。俺がどう思っているかは↓で5月に書いた通り。形の正解が分かっている天体を EHT で撮像してどんな絵が出るかを確かめるとともに、三好さんたちが独立の望遠鏡群を使って another EHT をやればいいと思う。

EHTのリング像は間違いか

Miyoshi et al. (2022) のプレプリントは以下で読める。

https://doi.org/10.48550/arXiv.2205.04623

【追記:上記論文は2022年6月30日付で出版されました。↓】

https://iopscience.iop.org/article/10.3847/1538-4357/ac6ddb

三好さんたちが再解析で出たと主張されているジェットの絵はスケールの目盛がミリ秒角なので、EHT のシャドウ像(〜40 マイクロ秒角)より100倍くらい解像度が粗い(視野が広い)ことに注意。

んで、これに対する EHT Collaboration 側の反論も公開されている。

Imaging Reanalyses of EHT Data

曰く、EHT の生データも解析ソフトも公開されていて第三者が検証可能になっている(だからこそ三好さんたちも独自に再解析できたわけだ)。これまでに4チームが EHTC とは独立に検証していて、いずれもリング構造を再現している。Miyoshi et al. (2022) は、「EHT のリング像は FoV(望遠鏡の観測視野の広さ)として狭い値を使ったときに発生する artifact であって、元が点光源であってもちょうど40マイクロ秒角くらいのリング像が出てしまうのだ」と主張しているが、実際には FoV の値や他のパラメタをさまざまに広く変えてみても、リング構造はちゃんと出てくる、三好さんたちはデータと手法を誤解して間違った結論を導いている——とのこと。

こういうとき、非専門家の我々には中身の評価はなかなかできないのだが、非専門家であっても「周辺」に転がっているさまざまな公開情報から嗅ぎ取れる何かがあり、それらが示唆するものは馬鹿にできないと自分は思っている。一種の OSINT とも言える。

今回の例で言うと、Miyoshi et al. (2022) の3人の著者のうち、電波天文学者は三好さんだけである。加藤成晃さん(理研)は MHD のシミュレーションが専門で、電波天文ではない。牧野さんも多才な人であることは重々承知しているが、専門はN体シミュレーションをはじめとする計算天文学及び計算機科学であって、電波天文ではない。つまり、EHT の結果に疑義を唱えるという電波天文学における重大な問題提起であるにもかかわらず、三好さんは電波天文屋を一人も共著者に引き入れることができなかったということにほかならない。これが何を意味するのかについて考えてみることは、わりと重要ではないかと思う。


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“EHTへの異論” への1件のコメント

  1. […] パッケージの文字やメーカー名などから、ああ、なんかこの商品はヤバいな、と何となく感じ取って買うのをやめておく、といったことを私たちは日常的にやっていて、こういうのを経験知と呼ぶわけだが、論文も同じだろう、というのが私が言いたかったことです。 […]