All Too Well (10 Minute Version) / Taylor Swift

テイラー・スウィフトはいいな、と最近突然思うようになり、1stアルバムから1枚ずつ買って真面目に聴いている(いまだサブスクではない人)。YouTubeで新しい曲も聴いている。

『1989』まで買って聴き、この人のポップアイコンとしての姿は一面にすぎなくて、本質的にはずっとカントリーミュージックの人だということを深く納得した。

Shake It Off」「Blank Space」「You Belong With Me」「We Are Never Ever Getting Back Together」「Red」などなど、全人類に受けるポップミュージックを次々に生み出す才能も凄いが、『Red (Taylor’s Version)』に収録された「All Too Well (10 Minute Version)」が一番好き。これがテイラーのキャリアで最高の一曲という人は多いらしい。分かる。「Billboard 1位を取った最も長い曲」のギネス世界記録にもなっている。

英語がそんなに聞き取れないので、洋楽を聴いて泣くようなことは今までなかったが、これは泣いた。聴くたびに泣ける。夜中のキッチンで冷蔵庫の光に照らされて二人で踊るという描写と、彼がもう来ないと分かっていながらドアを見て待っている「私」を見て、父親が「21歳の誕生日を迎えるってのは楽しいことのはずなんだが」と言う場面。あと、最初と最後に出てくるスカーフ。この曲はほぼ彼女の実体験に基づいていると言われるが、よくこんな詞が書けるなと思う。

歳の離れた二人の破局を描いた曲だが、親兄弟とか通りすがりのどっかの女優とか、二人の恋愛に関係しない第三者がこんなにたくさん出てくる曲は珍しい気がする。すごく映画的。実際、この詞を元にしたショートフィルムがテイラー自身の脚本・監督で制作されていて、グラミー賞のベストミュージックビデオ賞やMTV VMAを受賞している。

テイラー・スウィフトがいいのは、曲が大変分かりやすいこと。「All Too Well」もI→V→vi→IVの循環がひたすら続く、いわゆるポップパンク進行。世界的に流行っているコード進行だが、テイラーのこの進行の曲は20曲以上あるらしい。カントリーの弾き語りをずっとやっていた人ならではという感じ。