新緑

栗です。

IUT の話を書いたら、ふだんの5倍くらいのアクセスがあって、やはり今でも関心は高いらしい。特に米国・ドイツ・インド・英国・オーストラリアあたりの海外からアクセスが増えている。こないだ書いたものは主に国内向けの情報だが、時間があれば英訳も投稿するかも。

IUT の問題を以前から批判的に取り上げている TARO-NISHINO さんのブログも3月末に更新されていた(その後の追記もあり)。Quanta Magazine の記事の和訳、Joshi の論文に対する望月氏の反応や、川上量生氏の賞の件など。

IUT に関する批判の声が国内であまりにも少ないので、自分の感覚がおかしいのだろうかと不安になることがあるが、こういうものを読むと、やはり変なのは自分の方ではないよね、と安心する。

国内のメディアやファンが望月氏を無邪気に称賛し続けている理由の一つに、日本の(望月グループ以外の)数学コミュニティが沈黙を続けているという点がある。「論じるには数論幾何に関するきわめて専門的な知識が要るので、専門外の立場で軽々しく発言することはしない」というのは研究者の姿勢としてはまあ理解できるが、「私は専門外だから」というのを口実にして逃げているという言い方もできる。数学の中身については論じられなくても、「彼らの学問的誠実性の欠如」に関しては何かしらもう少し発言してもよいのではないか。望月グループ以外の日本の数学者たちがどういう反応をしているのか(していないのか)という部分も、世界から観察されているはず。

そういえば、日本評論社の「数学セミナー」とサイエンス社の「数理科学」は、私がバックナンバーを検索してみた限りでは、両誌とも特集などで IUT を取り上げたことは一度もないようだ。どちらもライターではなく研究者が執筆するスタイルの雑誌であり、雑誌として特に否定的意見を述べることはないが、肯定的に取り上げることもしないという形で、執筆者・編集部とも見識を示している、とは言える。(「数学セミナー」2010年12月号の「続・解けそうで解けない問題」という特集で「フェルマーの最終定理とabc予想」という記事は載っている。これは2010年なので望月論文の発表以前。)