来年からRIJFESがひたちなか海浜公園に戻る(蘇我とひたちなかでやる)話を最終日に発表するはずが、NHK水戸がフライング報道してしまった件で、渋谷陽一が怒っている。
RIJFESはCOVID-19で2020年は中止、2021年は対策をした上での開催を予定していたが、茨城県医師会が中止を要請してこの年も中止。2022年からは千葉市蘇我スポーツ公園に移転して開催された。この蘇我移転を決めた際にもNHK水戸がフライング報道しようとして、それはやめてくれとロッキング・オンが申し入れてフライングはされなかったものの、NHK水戸のデスクがそのことへの意趣返しとして今回フライングを強行したのでは、という渋谷氏の想像が語られている。
数日後には公式発表されるであろう、そこまで速報にニュースバリューがあるとも思えないネタを、新聞・テレビがフライング報道して公式発表を台無しにする、という場面は、私の短いライター経験の中でも目にしたことがある。オールドメディアの価値観はあまり理解できないのだが、他社より1秒でも早く報じたいという商売上の動機と、「これは国民の「知る権利」の行使であり、そのために送り手と受け手のお楽しみが壊れようが知ったことではない」という「暴力的な正義感」が彼らの行動原理にある、とは感じている。
現実の作法としては、フライング報道して欲しくないネタは報道解禁日時を設定した上でプレスリリースをメディアに配布するのが普通だと思うが、今回ロッキング・オンは明示的に報道解禁日時を設定していたわけではないようである。(ITmediaの報道で当初「解禁日時を設定していた」としていたのが後に訂正されたところを見ると、文書での明示的な解禁日時の設定はなかったように見える。)
【修正履歴:8月10日午後7時45分 掲載当初、開催場所の発表について解禁日時の設定があったと記載していましたが、外部からの指摘を受け再度確認し、事実に基づいて記述を修正しました】
ロッキン、NHK報道に抗議 「約束を台無しにするリーク報道は迷惑」 総合Pが怒りの声明【修正あり】 – ITmedia NEWS
まあとりあえず、今回のことだけを見るとNHKひどいなと思うわけだが、一方で、自分たちの論理を押し付けてきたという意味ではロッキング・オンもたいがいひどい、という話も思い出した。
ロッキング・オンは自社の雑誌で取材対象者にゲラのチェックをさせないという話がある。メディアは取材対象者の広報機関ではなく、メディア側に編集権というものがあるので、自由権の一種としてゲラを事前チェックさせない権利があるというのは分からなくもないのだが、「載せてやるから金払え」という実質的な記事広告であってもチェックをさせないという証言がある。
掟 そういえばロッキンオンっていうクソ雑誌があるんですけど、あいつら広告費でページを買わせるくせに原稿の直しには一切応じないんですよ。以前ロマンポルシェ。でインタビューを受けたんですが、取材に来たのが学生あがりみたいなアンちゃんで話全然理解出来てないし、写真撮影は使い捨てに毛が生えた程度のカメラでやってるしで、あきらかにナメられて。どんな記事になるのかすごく心配だったので、ゲラ(※入校前の原稿のこと)がどうなったか当時のマネージャーが編集部に電話したんです。そしたら「うちはゲラチェックとか基本的にやってないんで」、「うちは尾崎がゲラチェックさせろって時もさせませんでしたから」って、平然と言われたらしくて。いやいやいや、お前ら今、尾崎豊が俺達よりも遥かに上の人みたいに言ってるけど、俺は尾崎より自分を下だと思ったことはないし、第一そんなもん理由になんねえから。ふざけた会社だなと。それ以来、ロッキンオンの印象と共に、尾崎豊の印象も悪くなったんです。その時の怒りがすべて尾崎豊に行っちゃったんですね。尾崎ファンの皆さんすいません。これはすべてロッキンオンが悪い!
ロマンポルシェ。(’10年4月号) – インタビュー | Rooftop
こういうのを思い返すと、これまでさんざん「取材者の論理(正義)」を押し付けてきたロッキング・オンが、いざ自分たちが取材される側に回った途端に「取材者の論理(正義)という横暴」を非難するというのは、なんだかなぁ、と鼻白む感がなくもない。
なお、自分のお付き合いのある雑誌では、取材者にゲラをチェックしてもらうのは普通にやっている。事実誤認や取材者(私)の誤解があるかもしれないし。ただ、事前チェックはしてもらった上で、最終誌面をどういう文言にするかは編集部が権限を持っている。そんな感じです。