以前に大変お世話になった

元Newton編集部の三ツ村さんの記事。

https://www.businessinsider.jp/post-276426

2017年の事件や民事再生の話については過去に報道されていてほぼ既知だが、社員の給与の遅配が発生していたというところは自分にとっては新情報。遅配が出たらだいたい会社は終わりですね。終わらなくても逃げた方が良い。自分も以前の職場で、業績不振のため全員給与10%カットというのは2回経験したが、遅配は幸いなかった。

前社長の出資法違反事件の発端は、タブレットで学べるTOEICとかのデジタル教材を売る事業(Newton e-Learning)をニュートンプレスとは別の会社でやっていて、そちらが全然儲からなかったということですね。

https://www.itmedia.co.jp/business/articles/1702/20/news136.html

Newton e-Learning は2006年からとのことだが、初代 iPhone, iPod touch が2007年発売、App Store 開始が2008年、初代 iPad が2010年発売なので、元々の e-Learning はPCプラットフォームだったと思われる。2008年から業績が悪化とのことなので、ちょうど e-Learning 事業を始めたところにPCからスマホ・タブレット時代への移行が始まってしまい、あわててスマホ・タブレットにもプラットフォームを広げたが、うまくいかなかった、という感じだろうか。モバイルアプリの時代になって教材関係は競合相手も山ほど出ただろうし。

前社長たちは e-Learning のマイナスをニュートンプレスからの資金で補塡し、それでニュートンプレスの財務状況も厳しくなった。さらに、「Newton」の定期購読者からも e-Learning に出資を募り、ここで元本保証を謳ってしまって出資法違反に問われたということらしい。

表に出てきた情報を見る限り、私腹を肥やすためではなく、斜陽産業である出版事業をカバーしようとして始めた e-Learning がうまくいかなくて、資金集めのセールストークで一線を越えてしまった——ということなので、ちょっと(かなり)同情したくなる事件ではある。

デジタルコンテンツの事業化は本当に難しい。前の職場でも、1990年代にCD-ROMで出していた動植物の図鑑とかをアプリ化して一時期たくさん出していたが、結局続かなかった。アプリ自体の価格が、無料とかせいぜいアプリ内課金で数百円〜1,000円くらいの水準で定着してしまったのがきつい。1,000円のアプリが1,000本売れても100万円にしかならない。ここからApple税が引かれて残るのは70万とか。それに対して、ソフトウェア開発のコストの相場は自分がいた当時で1人月当たり100万〜150万と言われていた。これだと、初回の開発はできても、その後の継続的な不具合修正や機能追加は無理。今はアプリに広告を組み込むとか、アプリ内課金をすると広告オフ・追加機能開放みたいな形が多いが、本数が出ない自然科学や教育分野ではそれでも、ビジネスとして成立させるのは相当難しいだろう。

出版の未来もなかなか明るくない。出版や印刷の老舗は歴史的事情で都心のいい場所に不動産を持っているので、そこにビルを建てて貸すという不動産賃貸事業で本業の赤字を埋めて延命しているという例をよく見聞する。朝日新聞だっていつまで存在するか分からんからね。