「中国のロケットが

制御不能状態で大気圏再突入する」という報道が相次いでいるが、報道の仕方にいろいろ問題がある。

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  • 使用済みロケットはどの国も制御なしで落下させている。最近では安全な海域に制御落下させる実験も始まっているが、まだこれからの技術。唯一の例外が、自律的に降りてくる SpaceX の再使用可能ロケット。
  • 国防総省が使用済みロケットを追跡するのも、いつも行われていること。使用済みロケットなどの宇宙ごみを含め、地球を周回する直径10cm以上の物体には衛星カタログ番号が振られ、レーダー観測などで追跡されている。今回のロケットが危険だから追跡しているという意味ではない。

今回なぜいきなり中国のロケットだけが問題視されているのか不思議だったが、SpaceNews に詳しい解説があった。

Huge rocket looks set for uncontrolled reentry following Chinese space station launch – SpaceNews

中国が今回打ち上げた長征5号Bは、多段式ではなく1段式+ブースターという構成になっている。ペイロードが宇宙ステーションのモジュールで、かなり大きいためにこういう構成になっているようだ。

1段式なので、第1段が直接地球周回軌道に乗り、ペイロードを分離する。分離した後の第1段は当然軌道上に残る。ロケットの第1段というのはどのロケットも非常に大きい。長征5号Bの第1段は21tある。これは軌道上の物体としてはかなり大きい(衛星軌道から落下した過去最大の物体は1979年の「スカイラブ」で、76tだった)。過去30年で10t以上の物体が無制御で再突入した例はない。これだけ大きいと2〜4割は燃え尽きずに地上に達するので、ここが問題視されている、というのが今回の話の肝。

普通の多段式ロケットの第1段は打ち上げ後数分で切り離され、周回軌道に入ることなく落下するので、落ちる場所がほぼ予測でき、問題にならない。また、第2段・第3段などはペイロードとともに周回軌道に乗るものの、たいていは2tくらいの重さしかないので、これも大きな問題にはならない(しかしそれでも、大気抵抗で自然に落ちてくるまでは宇宙ごみとして軌道上にとどまるわけなので、そういうのはなるべく減らしましょうということで、制御落下実験が行われている)。