「Newton」2025年1月号

写真記事「JWST最新宇宙ギャラリー」を執筆いたしました。よろしければご覧ください。

科学雑誌ニュートン最新号(2025年1月号) 「SFは実現可能か」 | ニュートンプレス

年1回くらいのペースでHSTやJWSTの最新画像を記事にしており、今回はJWSTの2024年ベストヒッツという感じのラインナップ。

JWSTは赤外だけあって星形成領域の画像などが凄いが、それ以外に重力レンズ画像もかなり面白いと改めて思った。銀河団の重力で引き伸ばされた遠方銀河のアーク像の中に同じ超新星の像が何個も見えて、しかも像ごとに光路差があるので見え始める時期が数年違うとか、凄いことになっている。

一番凄いなと思ったのは、記事でも紹介した「クエスチョンマーク銀河」と呼ばれるレンズ像。

NASA’s Webb Reveals Distorted Galaxy Forming Cosmic Question Mark  | Webb

A〜Eは遠くにある同一の相互作用銀河が手前の銀河団の重力レンズ効果で蜃気楼のように5個の像に分裂したもの。face-onとedge-onの円盤銀河が衝突してかたつむりのような形状になっている銀河ペアだが、特にAとE。形がまったく同じ。

同じ天体の像が分裂してるんだから同じで当たり前なんだけど、遠い銀河の像ってもともとぼんやりした斑点にしか見えないものが多いので、「これとこれは実は同じ天体が2個の像になってるんですよ」と言われても、いまいちぴんと来ないものが多かった。こういうふうに具体的な特徴を持った銀河像が確かに複数個に分裂してますね、と分かるようなものが公開されたのはほぼ史上初ではないか。

よく見るとBも歪みが少なくてA,Eとほぼ同じ形を保っていて、しかもこれはA,Eとは鏡像(裏返し)になっている(重力レンズ像は裏返しになることもよくある)。重力レンズを再現したCGの世界ではこういうのはよく見るが、現実の天体画像でこれほどはっきりと見ることができるのは、さすが開発費1兆円の望遠鏡だけある。