「噴火のCO2は人類の放出量を軽く超えるから脱炭素など無意味」説

竹田恒泰がそんなtweetをしているが、間違いである。

火山ガスとして放出されるCO2の量はよく推定されていて、地球上のすべての火山が1年間に出す量を合計しても、人類が1年間に化石燃料を燃やして出す量の1/50〜1/100にしかならないことが分かっている。

ただし、1980年のセントへレンズ山や1991年のピナトゥボ山のような大きな噴火だと、噴火が起こっている最中の「放出レート」で比べれば、人類の放出レートと同程度になることはあった、と、上記サイトで引用されている Gerlach (2011) では計算している。しかしそれはあくまでもレート(単位時間当たりの放出量)を比較した話で、それほど多いCO2放出はせいぜい数時間しか続かない。だから放出量のトータルで比べれば、火山は人類の足元にも及ばない。竹田はそのへん分かっていないのか、分かってて嘘を書いているのか、よく知らんが、「大噴火があるんだから脱炭素など無意味だ」という話は明確に間違っている。

火山噴火が気候に影響を与えるのはむしろ、二酸化硫黄 (SO2) の方が大きい。SO2 が成層圏に運ばれると硫酸ができ、これが太陽光を反射して寒冷化する。ピナトゥボの2年後の1993年に記録的冷夏となってみんなでタイ米を食べた「平成の米騒動」はこれが原因だと考えられている。

なので、今回のトンガの噴火で食糧不足がまた来る、という不安を煽るtweetも散見されるわけだが、衛星からのリモートセンシングによって、今回放出されたSO2の量はおよそ0.4Tg(テラグラム)と推計されていて、これはピナトゥボ噴火のとき(約20Tg)の1/50である。そう考えると、今回は寒冷化するほどの影響はないと考えるのが妥当だろうという感じ。あと50回噴火すれば分からんが。

煽ったり叩いたり、濃い味付けの言説をばらまいて儲ける職種の人が世の中にはたくさんいるので、ちゃんと自分で調べて判断しなければならないし、調べて判断する方法を身に付けるために、人は勉強しなければならない。