NHKオンデマンドで見た。220円。
数学者は宇宙をつなげるか? 完全版 abc予想証明をめぐる数奇な物語 -NHKオンデマンド
ストーリーは地上波版と大差ないが、望月論文をめぐる騒動が数学コミュニティの外に波及して「大衆化」してしまっている点をScholzeさんやFaltingsさんが快く思っていない、といった話が追加されている点は有意義だった。Scholzeさんが今回取材に応じなかった理由について、Scholzeさんとともにマックスプランク数学研究所所長を務めているFaltingsさんが彼に代わって説明するシーンがあったり。
「2018年3月の京都での望月・星・Scholze・Stixのセミナー以降、ネットでの(望月陣営への)誹謗中傷が増えた」というくだりでは、Peter Woitさんの blog に書かれたコメントの映像が引用されていた。
だと思われる。ただし、2番目のコメントが書かれたのは2017年12月17日で、4者のセミナーより前なので、「4者セミナー以降に誹謗中傷が増えた」例には当てはまらない。テレビ屋というのは、どうせバレないと思ってこういう細かい嘘をつくものである。
ともあれ、論文を読んだこともないような素人が醜い言葉で望月氏を批判する状況を見て、Scholzeは関わるのをやめようと思ったのだ、とFaltingsさんは語っている。その心情はわからなくもない。
だが一方で、望月氏本人や Ivan Fesenko などの望月陣営の人々も、Scholze-Stix に対して嘲笑や軽視の言葉を浴びせ続けてきた事実がある。この点に触れないのは、番組として公平ではない。望月陣営が Scholze-Stix をどう評し、どう扱ってきたかについては過去にも書いた。
今回の完全版で評価できる点があるとすれば、番組の最後に望月陣営のエヴァンジェリストである加藤文元氏から「IUTにはまだ完全に言語化できていない部分がある。新しい言語体系を早急に作らなければならない」というコメントを引き出したところかなという気はする。