SLIM(再)、発熱

1/25、久々に御茶ノ水へ。ソラシティにあるいつものJAXAの部屋が会見場所だと思っていたが、行ったら閉まっていて、警備員さんに聞いたら上の階にある広い会議スペースが会場だった。

会見の様子はYouTubeライブ配信された通り。あの画像にはたまげた。ミッションが理想的に行けば SORA-Q がああいう画像を撮るはずというのはみんな分かっていたはずだが、実際に目の当たりにすると、インパクトが凄い。

JAXA | 変形型月面ロボットによる小型月着陸実証機(SLIM)の撮影およびデータ送信に成功

SLIMがひっくり返っていて、エンジンノズルが1基脱落しているのが画面を一層劇的にしている。真ん中の横線はパケットロスでデータが欠けた部分とのこと。LEV-2担当の平野さんは、本当はこの画像はもっと良い解像度で撮れているが、データのダウンリンクを優先したために圧縮して画質を落として転送した、画像が欠けているところも含めてそれが少し心残り、と話していたが、むしろこれがエモさを引き立てていて凄くいい。「はやぶさラストショット」の良さに通ずるものがある。

國中所長は20日の会見で、「ミッションに点数を付けるなら」という質問に「ぎりぎり合格の60点」と答えていた(太陽電池が発電していない問題があったので)。今回も同じ質問をされ、エンジンの破損があったこと、反面、分光カメラとLEV-1,2がちゃんと動いたことを加味して、「分光カメラとLEV-1,LEV-2で1点ずつ加点して63点」と答え、会場にいる全員が「か、辛すぎるw」と笑った。

國中さんはいい意味でポジショントークに徹する人なんですよね。良い成果はもちろん喜びたいに決まっているけど、うまくいかなかった部分があるのは事実で、そこに目をつぶってただ浮かれていても、次のミッションは良くならない。ISAS所長たる自分の立場ではそういうことはすべきでない、という考えをいつでも徹底しているように見える。「はやぶさ2」のときも、1回目の着陸・サンプル採取が成功した後、2回目の着陸・サンプル採取に本当に行くべきなのか、もう2回目は降りずにこのまま帰還した方が良いのではないか、2回目に挑むリスクより利益の方が大きいことを論理で示せ、とプロジェクトチームにガン詰めしたのが國中さんだったと言われている。国民の税金で宇宙に行く以上、根拠や評価がふわっとしたまま進めることは許容しない、それがスーツ(管理職)の役割だ、という強い意志を感じる。國中さんだってはやぶさのイオンエンジンの生みの親なんだし、本当ならずっと現場で研究していたいに決まってると思うのだが、マネジメントに就いた以上は現場とは別の視点で物事を見なければならないという意識が徹底していて、凄い人だなといつも思う。

あとまあ、「点数を付けるとしたら何点ですか」という質問は、そもそもあまりいい質問ではないよね。こういう質問をするのはだいたいテレビ局か一般紙の記者で、一般の人々に分かりやすいからそう尋ねるのだと思うが、宇宙探査のように膨大な要素が複雑に組み合わさったプロジェクトの評価をたった1本の数直線上にプロットさせるというのは、乱暴すぎる。きつい言い方をすれば、結果の咀嚼や本質の抽出を自分でしようとしない、記者側の怠慢なんだろうと思います。

会見が終わって帰宅した後からどうもだるさがあり、翌日には熱が出た。なんかもらってきたのかも。高熱ではないので何とかお仕事を納品。まだもう1件あるが。