拙訳『見たこともない宇宙』

が発売されました。NASAのジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡 (JWST) で撮影された最新天体画像集であると同時に、現在の観測天文学の最新トピックスを紹介した本です。よろしければぜひ、ご覧ください。

見たこともない宇宙 | 柏書房株式会社

見たこともない宇宙

  • キャロライン ハーパー 著
  • 中野 太郎 訳
  • 定価 3,850円(本体 3,500円)
  • 刊行 2025/04/10
  • ISBN 9784760156054
  • 判型 B5変、ページ数 224
  • 柏書房

原書が2024年発売なので内容が文字通り「最新」であるというのと、自分で言うのもあれだが、“天文学の経験者” がちゃんと訳した訳文になっているところが良いと思います。翻訳の過程で見つけた原著の誤記なども直させていただいています。

あと、(柏書房さんの本はどれもそうですが、)装幀やレイアウト、手触り、インクの匂いなどの質感が非常に良い本です。電子版は今のところないですが、ぜひ紙でお求めいただきたく。

電子辞書を引いたら、「拙訳」という言葉は広辞苑にしかなく、明鏡や新明解にはなかった。まあいい。

最終章「将来のミッション」ではNASAに限らず、日本・欧州・中国・インドなどの宇宙探査計画についてかなり網羅的に触れているが、そこでも紹介されている重要ミッションのいくつかをトランプ政権が中止にしようとしているようで、大変に残念。

特に、ナンシー・グレース・ローマン望遠鏡が今さら中止になるのはちょっと。

1969年、「粒子加速器は我が国を守る役に立つのか?」と議会で問われたフェルミ研究所のロバート・ウィルソン初代所長は、「国を守る役には立たないが、米国を『守るだけの価値のある国』にすることには役立つ」と答えたという有名な話がある。

科学とか芸術とか、今日明日のご飯に関係のない分野にふんだんに金をかけられるだけの余裕と見識を持つ米国こそが Great America なんじゃないのと思うのだが、MAGAな人たちの言う Great America はそれとはだいぶ違うものらしい。MAGAな人たちが何かをやればやるほど、米国の偉大さが毀損されていくように自分には見える。