をtumblrで見た。
WE CLEAN YOUR CLOCK という文字を見て、時計店が路面に出していた看板かなと思い、”STOD” って知らない単語だな、と思いつつもあまり気にせず、4時のインデックスを見て、あれ3時じゃん、3時が2つあるぞ、書き間違いか? と気づく。
顔を近づけていろんな細部を見るうちに、ああ、これはAIが生成した画像か、と理解した。大きな文字に矛盾がみられないと簡単に騙されてしまう。厄介な時代になった。
よくよく見れば、これだけ大きな吊り看板なのに支持部の構造が存在しないとか、8時 (VIII) の V の形がおかしいとか、小さな文字がぐにゃっているとか、奇妙な3本目の針があるとか、さまざまな粗が見つかる。しかし絵全体を眺める限りは破綻しているようには全く見えない。いかに私たちの視覚が「全体的な雰囲気」を把握することに特化しているかを思い知る。
時計ファンにおなじみの蘊蓄の一つとして、「ローマ数字の文字盤は4時が IV ではなく IIII のものが多い」という話がある(「時計職人の4 (watchmaker’s 4) 」とも呼ばれる)。なので、ローマ数字の文字盤を見るとまず4時に目が行く。そこで画像の破綻に気づいた。
なぜ時計の文字盤は IIII が多いのか、という理由にはさまざまな説がある。
- セイコーミュージアム
- シャルル5世が IV を嫌った説
- 英国のウェルズ大聖堂の時計が IIII だったから説
- IV にすると6時 (VI) と間違えるから説
- IIII にした方が、左右対称位置にある8時(VIII)と黒みが揃って美しいから説
- そもそも “4” は IV よりも IIII と書く方が多かった説
- Bob’s Watches
- ルイ14世(Louis XIV)が自分の名前に含まれる IV を使うことを禁じた説(じゃあ I, V, X, XI もダメだろ…)
- ローマ神話の最高神ユピテルの名前(ラテン語で IVPPITER)の一部を使うことは畏れ多いとされたから説
- 4時に IIII を使えば、I のみを使う数字、IとVを使う数字、IとXを使う数字が4個ずつになって対称性が良いから説
- MONOCHROME
- 識字率が低かった中世の庶民には、減法表記のローマ数字(4 = 5-1 で IV)は難しかったから説
- 鋳造で作る場合、4 を IIII にすれば、IIII, VIIII, XII の3種類の型だけあれば、これに部分的に金属を流し込むことで12種類全ての数字を作れる。IV があるとそうはいかなくなる、という説(この記事には「ただし9時も VIIII にする必要がある」と書かれているが、9時は XI を逆さに使うことにすれば、IIII, VIII, XII の3種類の型で済む気がする。)
いずれも俗説で、今さら歴史学的な検証は無理だろうが、いろんな人がいろんな思い付きを語っているのは面白い。