圧縮効果

「人との接触を避けるべき状況にもかかわらず、街は人でごった返している。けしからん」という映像を演出するために、テレビの情報番組などが超望遠レンズで遠方を撮る手法をしばしば使う。人がまばらにしかいない道でも、望遠で遠くを撮ると人同士が重なって映り、さも大混雑しているように見える。「望遠レンズの圧縮効果」と呼ばれたりするが、この圧縮効果は「望遠レンズだから」生じるわけではない、という点を俺も誤解していた。

圧縮効果は撮影者と被写体の距離によって発生し、使うレンズの焦点距離は関係ない。奥行方向に1mの間隔を置いて立つ2人の人間を撮影する場合、撮影者から2mの距離にAさん、3mの距離にBさんが立っていれば、Bさんの見かけのサイズはAさんの 2/3 になる。100mの距離にAさん、101mの距離にBさんがいれば、Bさんの見かけのサイズはAさんの 100/101 になる。二人が撮影者から離れるほど、(Aさんまでの距離 : Bさんまでの距離)の比は 1 に近づき、あたかも奥行が圧縮されたかのように遠近感が少なくなる。これだけの話なので、50mm で撮っても 200mm で撮っても、被写体までの距離さえ同じなら、50mm で撮った方を ¼ にトリミングすれば 200mm で撮った絵と全く同じパースになる(解像度はもちろん違うが)。圧縮効果が出るのはレンズの特性ではなく、単に撮るものまでの距離が遠いせい。

…という話を4年前の togetter で見かけて、なるほど、そりゃそうだな、と納得した。

…のだが、だからといって「『望遠レンズの』圧縮効果」という言葉を使うやつはバカだ、みたいな言葉狩りをヒステリックにやっている人もいて、何だかなぁと思う。上記の togetter でもそのへんのやり取りがまとめられていて、昔の同僚の人が言葉狩りの人と論争していて興味深かった。正論を振りかざす人はしばしば躁病的で暴力的になる。自分も気を付けなければ。