「ロシア・ウクライナ戦争1年の評価と今後の見通し」

3月に高橋杉雄先生が日本記者クラブで行った講演。記者会見だけでなく、専門家を呼んで話してもらう研究会をJNPCでは定期的に開いているらしい。あの戦争の見方だけでなく、冷戦終結以降の国際政治の潮流の中で今回の戦争がどう位置づけられるかも、素人に分かりやすくレビューされていて勉強になる。これほどの講演を無料で視聴できるのは素晴らしい。

NATOの東方拡大がこの戦争を招いた(のだから米欧も悪い)という言説は間違いである、ロシアが欧州の一員に加わるか、それとも汎スラブ主義的な非米欧の枢軸を目指すかという二択を迫られたときに、プーチンは自らのアイデンティティの問題として、米欧が差し伸べた手を拒否して後者を主体的に選び取ったのだ、という杉雄先生の解説は重要。

ロシアが核を使った場合、米国も対抗措置としてウクライナ国内で核を使う選択肢が(ゼレンスキーが許容すれば)あり得るという話も重要。先に核を使われたときに米国がどう対応するのかは、日本の隣の核保有国である中国も北朝鮮もケーススタディとして注視するはず、バイデンは西側の首脳に意見を求めるかもしれない、そのときに我々日本国民は岸田首相の返答として何を望むのか、使うべきと言って欲しいのか、使うなと言って欲しいのか、全員が自分のこととして考える必要がある、という話。