20日、打ち上げをYouTubeライブで見た。
StarshipをSuper Heavyの上に載せた状態で上げるのは初なので、どこまでいけるかという感じだったが、高度39kmまで上昇後、Super Heavyを分離できずに機体が回転。T+4分で指令破壊となった。一般のメディアは「試験飛行で爆発」のような報道だったが、つかまり立ちできるようになったばかりの赤ん坊がこけましたという話に特筆性がないのと同様に、この段階で指令破壊になったことにもニュースバリューがあるとはあまり思えない。むしろ「液体メタン燃料エンジン」と「33基クラスター」という2つの新規要素を持つロケットが39kmまで上がったことの方が重要。
StarshipとSuper Heavyはともに地上に帰還して再使用する仕様。今回の試験のプランでは、T+2分52秒でSuper Heavyを分離し、Super Heavyは帰還用の燃焼をしてからメキシコ湾に落下、Starshipは地球をほぼ1周してT+77分に大気圏再突入、ハワイ沖に落下する予定だった(今回はどちらも軟着陸はなし)。
リフトオフでゆっくりゆっくり上昇する様子は圧巻だった。実際の離昇はT+6秒くらいに見える。改めて見返すと、33基のエンジンのうち4基が着火せず、その後さらに2基消えて26基で上昇している。
他のロケットとの大きさ比較は以下の通り。N1はソ連がアポロに対抗して進めていた有人月ミッションのロケットで、飛行実績はない。
SpaceXの開発速度と「失敗の余地」の大きさについては、Ars Technicaの記事によると、
- すでにあと3機のSuper Heavyが製造済みでほぼ飛行可能
- NASAがSLSを1機作るのにかかった時間でSuper Heavyを10機生産できる
- Raptorエンジンを1日1基のペースで製造できる
という感じらしい。とはいえ、確立しなければならない要素技術はまだたくさんある。
今のところ、Starshipをアルテミス計画で使う前に、無人で静止衛星の打ち上げを1回、富豪を載せた有人地球周回を1回、富豪を載せた有人月往復を2回やることになっている。この有人月往復のうちの1回が前澤さんのやつ。
https://en.wikipedia.org/wiki/List_of_SpaceX_Starship_flight_tests#Future_operational_flights
有人月往復は自由帰還軌道なので、打ち上げと地球着陸のときにしか大きなΔVは要らず、軌道上での燃料補給はしない。なので燃料補給の技術は後回しでもいいが、Super HeavyとStarshipを地上に帰還させる技術は必要。Starshipは高度10kmからの垂直着陸に成功しているが、Super Heavyはこれから。
Super Heavyは着陸脚で立つのではなく、降りてくる機体を発射塔のアームでつかむ。宮本武蔵みたいな。着陸脚方式だと機体重量の1割くらいを脚が占めてしまうのと、回収から再打ち上げまでのターンアラウンドを短くしてバンバン上げたいという理由でこうなったらしい。
頭がおかしい、できんのかよ、と思うわけだが、今までもFalcon 9の垂直着陸のようなクレイジーな技術を実現させてきた実績があり、NASAもそのへんを評価して契約を結んでいるわけなので、まあ見守るしかない。