12月26日発売の同号にて、写真記事「レオナルド—万能人の実像」を執筆いたしました。よろしければご覧ください。
有名なヘリコプターの素描や人体比例図など、レオナルド・ダ・ヴィンチが遺した、いわゆる「レオナルドの手稿」を紹介しています。
レオナルドは絵画だけでなく、今でいう理学や工学を含むいろんな対象に興味を持ち、メモやスケッチを描きながら猛烈に考え、そしてすぐに飽きる(故に完成した仕事がきわめて少ない)という人だったらしい。風貌もイケメンで、何をやらせても一流で、何を聞いても分かりやすく説明してくれて完全に納得させられるが、しばらく経つと自分が何を納得したのか分からないことに気づく、という、ちょっと天才詐欺師みたいな人物でもあったようだ。
特集の「量子力学100年」も読み応えがあっておすすめ。記事中で使われる肖像画のタッチがちょっと変わりましたね。
以前に担当した記事で、前提知識として量子力学についてざっくり書く必要があったときに、監修の先生から「古い」「粒子と波の二重性とか、今どきそんな話をするのはもうやめろ」というようなことを言われて、少しトラウマになったことがある。近年、量子情報や量子測定に造詣の深い研究者によって、量子力学の歴史をなぞる形ではなく、いきなり状態ベクトルとかベルの定理から始まる「現代的な」量子力学の教科書(「堀田量子」「清水本」など)が複数刊行され、そういうトレンドがあるようである。
考えてみれば、いま天文学を教えるときにいちいち天動説や周転円・エカントなどを説明することは(天文学史の講義でない限り)ないわけで、毎回わざわざ迷走の歴史をなぞって話をする必要はないでしょ、いまの現場で道具として使われている形の量子論を紹介すればいいじゃない、というのはよく分かる。今回の Newton の記事は「史」の話なのであれはあれでよいと思うが、普通に量子論を説明するときには新しいやり方を考えなければならないのかもしれない。
量子もつれの話も、局所実在論の否定という真に深遠でぞっとする話まで、ポピュラーサイエンスとして一度ちゃんと紹介したい気はしている。(俺がそれを完全に理解しているとは言っていない)