母がニュースを見ながら、「この非常事態なのに製薬会社はなぜワクチンの製造ノウハウを全世界に無償で公開しないのか」と言った。うーん、実際にそうするのは難しい問題がありそう。
BBC にこのテーマをまとめた記事があった(2020年12月時点)。
もともと、大手製薬会社は COVID-19 ワクチンの開発には消極的だった。パンデミックのためのワクチンは大して儲からない。開発にコストがかかるわりに、貧しい国には高値で売れないし、全人類が2回接種すれば需要は終わってしまう。実際、過去にジカ熱や SARS のワクチン開発に乗り出した企業はビジネス的に大火傷をした。インフルエンザワクチンのように毎年確実に売れる薬や先進国で高く売れる薬の方がはるかに儲かる。
現在出回っている COVID-19 ワクチンの開発には各国政府・NPOの資金やビル・ゲイツなどの寄付が投入されていて、そのおかげで開発できた面がある。加えて、アストラゼネカはワクチンを原価ぎりぎりで出すことを約束していて、接種1回分の値段は $4-8。ただし mRNA ワクチンを作ったモデルナは $25-37 と高い値段を設定している。(mRNA ワクチンは低温輸送のコストがかさむという理由もある)
という感じで、大して旨味のない仕事をやってくれたのだから知財の独占くらいは許してもいいのではという意見があるようだ。
一方、国境なき医師団などは、技術を公開して世界中の製薬会社がジェネリックワクチンを作れるようにすべきだと言っている。COVID-19 関連の薬についてはパンデミックが終わるまで知財保護をやめてフリーにしようとインド・南アが WTO に提案し、途上国を中心に100か国以上が賛同したが、日米欧などの先進国が反対して協議は進んでいない。