abc 予想の証明を含む望月論文の出版について、自分も科学ライターを標榜する人間の端くれなので、2018年に望月氏の証明の欠陥を指摘した独・ボン大学の Peter Scholze さんにメール取材を試みた。
同様の問い合わせが殺到しているはずなのでまあ返事は来ないだろうと思っていたが、ありがたいことに Scholze さんから直接返信をいただいた。内容を公開する許可もいただいたので載せておく。英語メールが拙くてすみません。
— ココカラ
…
A few days ago, Dr. Mochizuki’s IUT papars were published at PRIMS.
https://www.ems-ph.org/journals/show_issue.php?issn=0034-5318&vol=57&iss=1
Much of the Japanese media has reported the news as a “feat” or “a breakthrough in mathematical history”, and the flaws in Mochizuki’s proof that you and Dr. Stix pointed out in 2018 haven’t been widely reported.
There are some reports that “there are pros and cons over Mochizuki’s papers,” but this seems to me far from the current evaluation of the mathematical community over IUT.
So I would like to ask you some questions.
(数日前、望月博士の IUT 論文が PRIMS から出版されました。
日本のメディアの大半はこのニュースを「快挙」または「数学史のブレイクスルー」だと報じていて、あなたと Stix 博士が2018年に指摘した望月氏の証明の欠陥については広く報道されてはいません。
「望月氏の論文には賛否両論ある」という報道もいくつかはされていますが、これは私には、IUT をめぐる数学コミュニティの今の評価とはかけ離れているようにみえます。
そこでいくつか質問をさせていただきます。)
– Have you already read the published version of Mochizuki’s papers?
(あなたは望月論文の publish されたバージョンは読みましたか?)
I have looked at them.
(すでに読みました。)
– (If yes,) Was the argument around “Corollary 3.12” that you were particularly concerned about improved?
((もし読んだのであれば、)あなた方が特に問題だとしていた論文の「系 3.12」についての議論は、改善されていましたか?)
No.
(いいえ。)
– What is your current view of Mochizuki’s IUT? Has it changed since 2018?
(望月氏のIUTについて、あなたの現在の見方はどういうものですか? 2018年から変わりましたか?)
My view has not changed since 2018.
(私の見方は2018年以来変わっていません。)
And can I publish your answers on my website or twitter if you give them?
(もしご回答いただけた場合、私のwebサイトやtwitterで回答を公開してもかまいませんか?)
Yes.
(はい。)
Best wishes,
Peter Scholze
— ココマデ
出版されたバージョンも読んだが、問題は改善されておらず、欠陥があるという認識にも変わりはない、との回答。まあ、そうなんだろうな。