そういうものの広告塔を有名人がやり、売れる件について。
BAKUNE は Perfume ともコラボしていた。馬鹿馬鹿しいと思う。遠赤外線で疲れがとれるパジャマなんか眉唾以外の何物でもないですよ、普通に考えて。キッツキツのパジャマより疲れないと言われればそれはそうだろうけど。
例えばユニクロのヒートテックは、皮膚から出た水蒸気がレーヨンの繊維に結露して吸収されるときに潜熱が放出されて暖まるという、科学的にまともなしくみを標榜していて、そこまでしか言っていないのでまあ問題はない。
BAKUNE の場合、皮膚から放射された遠赤外線がセラミックを練り込んだ特殊繊維に吸収され、再放射されるので暖かく、それで血行が促進されて疲れが回復する、と標榜している。遠赤外線が繊維に吸収されて再放射されるというのは、普通の衣服もみんなそうだろう。肌の上に一枚着ると暖かいのは、みんなそのしくみで暖かいんですよ。だったら BAKUNE でなくても、普通にあったかくして寝ればいいじゃないということになる。
「遠赤外線」というだけで何かありがたいもののように思っている人が多いが、-200〜500℃くらいの物体はみんな熱放射で遠赤外線を出している。珍しいものではない。BAKUNE はそういう当たり前の物理過程が働いているだけのものを1着2万円とか3万円で売っている。
BAKUNE は厚労省の「一般医療機器」に登録されていると謳っているが、一般医療機器というのは届出制で審査はないので、特に何か効果効能の裏付けになるものではない、というのは上の記事の通り。
先日も、よく見ている YouTube チャンネルの人が急に、化粧品のアンバサダーになったと告知していて、商品サイトを見てみたら、グラフェンを配合したボディジェルというものだった。長時間歩いた後で足に塗ると疲れが残らない、もうこれなしではいられない、と言っていたが、グラフェンにそんな効能、ありますかね…。
グラフェンは炭素原子が六角形の平面構造で並んだ物質で、熱伝導・電気伝導の特性などが工学分野でいろいろ応用できそうだと期待されている素材だが、皮膚に塗るだけで筋肉の疲労がとれるというのは、作用機序を想像できない。要はグラファイト(石炭、木炭、鉛筆の芯など)を原子1層分だけ剥いだ物質にすぎないのだが。
件の商品はこれをジェルに配合したと謳っていて、お値段は 200g で6,380円もする。
しかもメーカーは、「日本先制臨床医学会 認定商品」とも謳っている。聞いたことがない学会。学会事務局の所在地が「株式会社スーパーライトウォーター内」となっている。
もうこの辺ですでに数え役満なのだが、株式会社スーパーライトウォーターの web サイトを見ると、「重水素減少水」(笑)なるものを清涼飲料水として売っている会社らしい。文字通り、重水を減らした水で、美容・健康によいらしい。お値段は、重水素を 10ppm まで減らした高級タイプで 500ml×24本 168,480円(1本7,020円)。むせた。マイルドに 115ppm まで減らしたお安いタイプは売り切れていて価格は分からない。もう十分だが、要はグラフェンジェルを売っている会社も、こういう人たちのお仲間というわけである。
一般に、効果効能がないのにあると宣伝した場合には薬機法違反になる。商品サイトなどでは注意深く表現に気を付けているが、ネットの動画などでは有名人が「○○に効くんですよー」とストレートに言ってしまっていて、「※ 個人の感想です」の断り書きも出ないという雑なケースが目に付く。摘発されていないだけで、こういうのは違法だろう。
好きで応援している人がこういうものの広告塔になっていると、本当にがっかりする。宣伝の片棒を担いでもよい商品かどうかという判断能力が本人にも所属事務所にもないのだろう。