地球に接近する小惑星

地球に衝突する確率が 1% を超える直径数十mの小惑星「2024 YR4」が昨年末に発見されたという話題。

地球に接近する彗星・小惑星はまとめて「NEO (Near Earth Object)」と呼ばれ、見つかると衝突のリスク評価が行われる。危険度の指標として「トリノスケール」というのがあり、0〜10の11段階で評価される。

ぶつかる確率が高くてもサイズが小さければ危険度は小さいので、軌道の観測から衝突確率を、明るさの観測からサイズを推定して、この2つからトリノスケールを出す。ざっくり下図のような区分。

Torino scale – Torino scale – Wikipedia

横軸が衝突確率、縦軸がTNT換算で表した運動エネルギー(と直径)。水爆の核出力はだいたいTNT換算で1メガトンくらいだが、それと同じくらいのエネルギーを生じる天体衝突は直径20mの場合に相当する。エネルギーは天体の質量に比例するので、直径の3乗に比例する。

6600万年前に地球に衝突して恐竜を絶滅させた小惑星は直径10kmと推定されていて、この図の上端の線に当たる。直径200kmの衝突クレーターがユカタン半島に残されている。

トリノスケール 0 は「危険なし」、1 は「普通」、2〜4は「注意すべき」、5〜7は「脅威あり」、8〜10は「確実に衝突」となる。トリノスケール 1 の天体は年に数個見つかる。

今回の 2024 YR4 は直径40〜100m、衝突確率 1.2 %でトリノスケール 3 と評価された。トリノスケールは1995年に導入されたが、これまでに 2 以上と評価された天体は以下の2個しかない。

で、今回の 2024 YR4 が3個目となる。

アポフィスと 2004 VD17 はどちらも、その後の観測で軌道の決定精度が上がり、衝突確率がほぼゼロであることがはっきりしたため、現在ではトリノスケール 0 になっている。なので、今回の 2024 YR4 も観測が増えて軌道がよく決まれば確率は下がるのでは、という感じ。

アポフィスは、2023年に小惑星ベンヌのサンプルを持ち帰って現在は延長ミッションに入っているNASAの小惑星探査機「OSIRIS-REx」が2029年に訪れる予定。なので、今は探査機も「OSIRIS-APEX (OSIRIS-Apophis Explorer)」に改名されている。

「はやぶさ」が訪れた小惑星イトカワ、「はやぶさ2」が訪れたリュウグウ、OSIRIS-RExが訪れたベンヌ、次に訪れるアポフィスはすべて NEO である。火星と木星の間にいる「メインベルト小惑星」まで行くのはエネルギー的になかなか大変で、特にサンプルリターンまでやるのはかなり難しいので、現状の小惑星探査機のほとんどは地球軌道に近づく NEO を目標天体にしている。