頭皮の痒みがひどくて、皮膚科をもう一度予約した。顔と同じ脂漏性皮膚炎だと思うが、受診までの間に少しでも何とかしたいので、散髪してみた。乾燥はよくないというのだが、自分の感覚ではむしろ蒸れる方が痒みがひどくなる印象があるので、頭の通気性を上げたい。
脂漏性皮膚炎の原因の一つがマラセチアという皮膚常在菌の異常繁殖だといわれる。マラセチアは真菌(カビ・キノコ・酵母の仲間)で、皮膚の皮脂を餌にして、消化酵素のリパーゼを出して分解する。これは体内で脂肪が消化されるしくみと全く同じで、リパーゼの作用で皮脂は脂肪酸とモノグリセリドに分解される。脂肪酸とは、ギ酸、酢酸、…などの R-COOH の形をしている酸である。酸なので、これが皮膚を刺激して痒みを引き起こす。
顔と頭皮の脂漏性皮膚炎は20代の頃からずっと続いていて、一生付き合うしかないと諦めている。顔の方は昨年から皮膚科で治療するようになって症状が劇的に改善し、睡眠中に掻きむしって傷だらけになるといったことはほぼなくなった。素晴らしい。頭皮の方はわりと安定していたので治療には含めていなかったのだが、ここ数ヶ月でなんかひどく悪化した。
マラセチアの増殖を抑える成分が入っているシャンプーというのがいくつか売られているので、またそういうのに切り替えるか、ということで、ライオンの「オクト」を買ってきた。20代の頃にも使っていたやつ。まだ売ってるんだな。昨晩使ってみたが、寝ている間の痒みが低減した感じは確かにある。ただ、普通のシャンプーよりはだいぶ髪がきしきしする。
脂漏性皮膚炎については、そもそも洗顔料やシャンプーなど、界面活性剤で洗いすぎるのが良くないのだという言説もよく目にする。シャンプーをやめてお湯だけで洗髪する「湯シャン」に変えたら治った、とか。
これは万能の解決策ではなく、人によるんだろうと思う。自分は20代からずっと洗顔はお湯だけでやってきたが、顔の脂漏性皮膚炎は全く改善しなかった。昨年にステロイド軟膏で治療を始めると同時に「お湯洗顔」とクリームによる保湿をやめ、石鹸で洗顔→赤ちゃん用の化粧水(ほぼグリセリン水)で保湿、という形に変えたらかなり改善した。
界面活性剤で洗うと皮膚のバリアになる角質が減るし、細菌叢もなくなってしまうから良くない、というのが「お湯」派の説明だが、むしろ物理的刺激を与えない程度にソフトに界面活性剤で洗った方が、マラセチアの餌になる皮脂や産生された脂肪酸が洗い流されるとか、石鹸のアルカリで脂肪酸が中和されて良いんじゃないの?という気もする。(すでに生傷がある場合には刺激になって痒みを生じるので、傷の治療が先決になる。)
人によって皮膚の傷付きやすさや皮脂の分泌量も違い、いくつものパラメーターが相互作用し合って、発症する/しないのどちらに平衡点が落ち着くのかが変わるような、かなり複雑なシステムなんだろうなという印象はある。
そういえば、我々の学生時代には「脂肪はリパーゼによって脂肪酸とグリセリンに分解される」と習ったが、平成24年の教科書からは「脂肪酸とモノグリセリドに分解される」と変わったらしい。脂肪酸とグリセリンの3本の結合が全部切れるわけではないらしい。