大会運営側や WTA、他の選手など、わりと総スカンに近い形で大坂に否定的反応だったのが、うつを告白した途端に手のひら返し。面白い。狙っていたのかどうか不明だが、結果的に大坂のカードの切り方は絶妙だった。
彼女が問うていることは要するに、「陰キャやコミュ障の人間が、陰キャやコミュ障を保ったまま成功者になってはいかんのか?」ということで、深い問いだと思う。5/31 以前のテニス界の平均的な見解は、「プレーができるのは周りのサポートや支援があるからで、会見で嫌な質問に答えることも選手の義務である」というものだったが、それはどんな場合でも本当に本当なのか? じゃあうつ病患者やシャイな人間はプロスポーツの世界を諦めなければならないのか? という問いは、面白い。
「うつならそう最初に言えよ、ずるい」という反応もあるが、じゃあ「会見は義務」論はそもそも相手がうつかどうかで適用を諦めてもよい程度の話だったの? とか、自分のメンタルヘルスの問題を強制的に開示させるのって性的指向に関するアウティングと何が違うの? とか、いろいろな話が派生してくる。ここをつついた大坂選手は聡明な人だなぁと思います。
TED に内向性についてのプレゼンテーションがあったのを思い出した。
ダイバーシティ云々と言いながら、内向的な人間のことを未熟だとか甘えだと見なす考え方がまだまだ蔓延っている。
大坂選手がうつの話を出した後、「まずはゆっくり休んで」「一日も早い回復を期待しています」的なコメントも散見されたが、こういうコメントも結局、「うつはいつか回復するもの」「回復させるべきもの」「うつは異常で、うつでない状態が正常」みたいな価値観を暗黙の前提にしているわけで、少し引っかかる。自殺念慮みたいなのはさすがにコントロールした方がいいと思うが、傷付きやすく落ち込みやすいメンタルを抱えながら社会で活躍してはいかんのか、と思うわけです。