物理学賞・化学賞2025

物理学賞は電気回路における巨視的量子トンネル効果とエネルギーの量子化の発見。

ジョセフソン素子など、巨視的と言えるスケールでも量子論的な効果が現れる現象を発見した業績に対してということらしい。将来の量子コンピューターの素子として期待されている超伝導量子ビットにも関連する業績らしい。

加藤岳夫さん(東大物性研)の連ツイが参考になった。埋め込みだと連ツイが見えないので web ブラウザで。

天文宇宙来るかなぁと思ったけど、そういえば今年は量子力学100周年だった。そういう要因もあっての選考かも。


化学賞は金属有機構造体 (MOF) の開発。

MOFは金属のイオンと有機分子が組み合わさった多孔質の物質で、ゼオライトや活性炭のような素材と違い、穴のサイズを精密にコントロールして設計できる。特定の分子だけを通すフィルターや特定の分子を吸蔵するデバイスなどに使える。CO2の分離・貯蔵とか水素の貯蔵など、脱炭素方面の用途で既存の素材に取って代われる良い性質がありそうというものらしい。


何となくの印象だが、近年の物理学賞・化学賞からは、科学の社会性みたいなものをノーベル賞委員会が重視するようになったという、かなりはっきりした変化を感じる。私たちの社会を大きく変えた、またはこれから変えると期待されている、もしくは社会問題の解決に寄与する何かに関わる発明・発見が授賞対象になっているような。2021年の真鍋さんたち(気候変動)や昨年のAI祭りを見ていてもそう。2022年のベル不等式の破れにしても、これ自体で自然界の深い性質を明らかにした仕事ではあるが、今年の巨視的量子効果と同様、量子もつれが将来の量子コンピューターを成立させる本質的な性質だという観点から選ばれた、という感じがある。

反面、短期的に何かの役に立つわけではない、いわゆる「純粋」な基礎科学(宇宙とか笑)に対しては委員会の気持ちが少し離れているのかな、という感じ。2020年以降のコロナ禍・戦争・ポピュリズムなどのせいでモードが変わって、「学問も社会と無縁ではいられない」といううっすらとした圧力が増しているのかなー。個人の感想です。