クリックケミストリーと生体直交化学なるものを確立した三氏に授賞。
The Nobel Prize in Chemistry 2022
Sharpless 博士は2001年に続いて2回目のノーベル化学賞受賞。2001年のときは野依良治さんとともに受賞している。
クリックケミストリーとは、分子を合成するときに「結合しやすい基の組み合わせ」を使って分子をつなげるという方法らしい。普通の化学合成だと、温度を上げたり触媒を混ぜたりして分子Aのここに分子Bのここを結合したい、と頑張るわけだが、やってみると欲しいものではない分子もたくさんできてしまったり、反応させるのに高温が必要だったりして、効率良く目的の分子を作るにはいろいろな工夫が要る。
ところが、アジ基(-N=N=N-)を持つ「アジド」とCの三重結合(-C≡C-)を持つ炭化水素(アルキン)を混ぜてやると、こいつらは簡単に結合してC2個とN3個でできた五角形を作る性質がある。まるでシートベルトのバックルの凸部と凹部がはまるように、簡単かつ選択的に結合して他の分子はくっつかない。シートベルトのバックルのようにカチッ (“click!”) と結合するから「クリック反応(クリックケミストリー)」と名付けられたらしい。
これを使うと、さまざまな分子にアジドとアルキンの部分を設けてやれば、そこがバックルのように簡単かつ選択的にくっつくインターフェイスになって、簡単に分子同士をつなぐことが可能になる。例えば、観察したい分子にアジドの部分を作り、アルキン側には蛍光を発する分子をくっつけてやれば、この2つをクリック反応させることで見たい分子だけを光らせることができる。こういうことを可能にしたのがこの三人だという話らしいです。
アジド+アルキン以外にもいろんなペアがあり、特に生体分子と反応しないペアを使って合成するのを生体直交反応(生体直交化学)と呼ぶらしい。生体直交反応であれば、生き物の中で起こる反応を邪魔せずにいろんな応用ができ、分子生物学や医学・薬学方面で大変嬉しい。
mRNA ワクチンが化学賞をとるのでは、とも予想されていたが、やはりノーベル賞委員会はあんまり流行には流されないですね。